▲KBS2ドラマ『高麗契丹戦争』のポスター

 韓国KBS2大河ドラマ『高麗契丹戦争』の制作陣と原作者が、ドラマの展開を巡って対立している。原作小説を書いた作家のキル・スンス氏は「ドラマの内容が原作とは違い、歴史的事実とも違う内容が含まれている」という点を指摘した。これに対し制作陣側は「キル氏に諮問を求めてはおらず、ドラマと小説は全く違う物語」という趣旨で釈明した。するとキル氏が再反論に乗り出し、双方の衝突は深刻化する様相を見せている。

 ドラマの展開を巡って雑音が生じたのは、『高麗契丹戦争』第17話・18話からだ。この回では、姜邯賛(カン・ガムチャン)と対立した高麗国王・顕宗が泣きながら馬に乗り、落馬してしまう場面が登場した。これに、視聴者の間から「顕宗を中二病のわがままな坊やのように描写した」と酷評が出たのだ。

 キル氏は1月15日にブログで「歴史的事実を十分に熟知し、諮問も十分に受けて脚本を書くべきだったのに、熟知していなかった」と、視聴者の反応に同調する記事を載せた。そうして「脚本家がわざと原作を避けて、脚本家自身の作品を書こうとしているように見える」とし「原作を避けようとして、原作の中にある歴史まで避けて書いている。16話までは、それでも原作の枠組みが存在していたが、17話からは完全に脚本家自身の作品を書いている」とつづった。歴史歪曲(わいきょく)の懸念があるという主張だった。

 原作小説から抜け出して歴史歪曲をしているという主張に対し、KBS2『高麗契丹戦争』の制作陣は1月23日に見解を発表した。KBSによると、ドラマを企画したチョン・ウソン監督は、顕宗を主人公にした契丹との10年戦争をドラマ化したいという簡略な企画案を作成し、制作に着手した。その後、資料を検索していた際に、キル氏の小説『高麗契丹戦記』を検討するようになった。

 制作陣は「2022年上半期に版権獲得および諮問契約を結び、その後、チョン監督は制作過程においてドラマに登場する戦争場面および戦闘場面のディティールを小説『高麗契丹戦記』から創造した」と説明した。次いで「同年下半期、脚本家イ・ジョンウ氏が『高麗契丹戦争』に本格的に合流し、台本執筆に入った」「脚本家イ氏は小説『高麗契丹戦記』を検討した後、自分が考える物語の方向性とは合わないと判断し、チョン監督もまた脚本家イ氏の意見に共感した。これが第1話から現在まで、小説とは全く違う新たな物語をお届けすることになった由来」と述べた。

 制作陣は「チョン監督は、ドラマ諮問の経験が豊富なチョ・ギョンラン博士を中心に諮問チームを新たに立ち上げた」「脚本家イ氏は第1話から、ストーリーラインおよびシーンごとのディテールに至るまで、諮問チームの意見を集約して台本を執筆している」とも説明した。

 チョン監督も同じく1月23日に、フェイスブックを通して「原作契約のケースは、リメークや一部脚色をする形態の契約ではなかった。どうしても必要な戦闘場面をリアルに再現してみようと、キル氏と原作および諮問契約を結び、劇中の一部戦闘場面にちゃんと活用した」と主張した。

 さらに「キル氏は、脚本家イ・ジョンウ氏の台本執筆が始まる時点で、自らの小説と『ストーリーテリングの方向性が違う』という理由で考証に関する諮問を拒絶した」「その後、私は新たな諮問者を選定し、細かな交渉作業を経て執筆および制作を進めている」とし、その上で「キル氏が、自分だけがこの分野の専門家であるかのように語っていることにも同意できない」「このドラマの諮問者は歴史を専攻し、歴史を生涯研究してきた方」と述べた。

 台本を執筆した脚本家イ氏も「『高麗契丹戦争』は小説『高麗契丹戦記』を映像化する目的で企画されたものではない」とし「ドラマはKBS独自企画として誕生した」と指摘した。さらに「私が台本で具現したあらゆるシーンは、そうした過程を経て新たに創作された場面」であるとし「最初から違う道を進んでいて、どの場面にも一つも一致するものがない。このように最初から別個の作品だったのだから、実際のところ原作と比較すること自体が無意味」と主張した。

 制作陣の相次ぐ見解表明に対し、キル氏は「脚本家イ氏が、まるで私の上に立つ人間であるかのように、補助脚本家がやる業務をさせた」とし、諮問拒絶は事実ではないと再反論した。

チェ・ヘスン記者

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