▲現在韓国社会で政治的に最も革新色が強い世代は、20~30代の「MZ世代」でも10代でもない。40~50代だ。明確な世代的特性(コーホート)を共有する人々は20年以上「革新の孤島」になっている/イラスト=キム・ヨンソク

 孔子の言によれば、40~50代になると世事に惑わされず、天命を知るようになる。この成熟した年代の人々は、人生の道理を悟り、老人と子どもの世代をつなぐ架け橋になってくれると人々は信じてきた。韓国で「革新中年」の時代がやってくるまでは――。

 韓国では40~50代の中年層で最も革新傾向が強い。親世代である60代や70代以上、子の世代である10~30代が保守化するか、物事によって支持政党を柔軟に選択するようになったのに対し、40~50代の革新・左派色はまるで「理念の孤島」のようだ。彼らは10年前も、20年前も革新だった。彼らが自ら感じる文化・政治的達成感は他の世代の追従を許さない。中年男女はどんな情熱を胸に抱いて生きているのだろうか。

■「私の目が黒いうちは…」

 3月初め、曺国(チョ・グク)元法務部長官率いる祖国革新党の結党後、ギャラップが世論調査を行った。29歳以下の支持率は0%。30代で1%、60代で8%、70代では1%だった。ところが、40代と50代だけがそれぞれ11%、18%で二桁を記録した。祖国革新党は子女の入試不正事件で二審まで実刑となった曺国代表が「3年(現政権残り任期)は長い」「検察独裁終息」などのスローガンを掲げて結成した党だ。

 同じ調査で共に民主党と曺国新党の支持率を合計すると、40代、50代だけがそれぞれ58%、51%で過半数を占めた。特に40代では民主党の支持率(47%)が「国民の力」(22%)を2倍以上上回った。

 2022年の大統領選では、地上波3社の出口調査で、40代有権者のうち李在明(イ・ジェミョン)氏に投票した人が60.5%、尹錫悦(ユン・ソンニョル)氏に投票した人が35.4%で、やはり革新への偏りが最も大きかった。21年の地方再補選でも、ソウル、釜山で国民の力の市長候補が当選する中、40~50代では民主党候補の得票が上回ったことが話題になった。

 選挙のたびに中年層が集まるインターネット上の掲示板やグループチャットが沸き立つ。「私たちが革新のコンクリート支持層だって? ダイヤモンド支持層だ!」 「私の目が黒いうちは保守に入れることはない」とし、保守に投票した事実を書き込んでいる。一方で「自分も40代だが皆さんを理解できない」「どうかしっかりしてほしい」という嘆きの声もある。

 暴走する革新中年を見て、20~30代は戸惑う。「いったいオヤジたちどうしたのか?」「受験生を育てていながら、曺国を支持するなんておかしくないか」――。体は衰え始めても、胸を高鳴らせる中年層のことを若年層は「革新大学生」とあざ笑い、年配の人たちも「ヤングフォーティー(若いふりをする40代)」と舌打ちする。

■空腹を知らないX世代

 通常40代は資産を蓄え、子どもを育てながら安定を求め、保守化が進むという年齢効果(エイジエフェクト)が表れる時期だ。ところが、韓国の40~50代は年齢効果に逆行しており、専門家は「初の変種世代」だと診断している。

 現在の40~50代は第2次ベビーブーム世代だ。40代の人口は792万人、50代は869万人で、全ての年齢層で最も数が多い。30代の657万人、20代の619万人、10代の465万人、10歳未満の333万人と減っていく次の世代を圧倒する。組織と社会の中軸を成す40~50代は、60代、70代になっても、引き続き韓国の政治・社会情勢を揺るがす可能性が高い。

 40~50代は青少年期から明確な世代的特性を共有してきた。1970年代初めから1980年代初めにかけて生まれ、産業化の果実が蓄積された80~90年代の高度成長期と民主化の恩恵を享受して成長した。「檀君による建国以降初めて空腹を知らない世代」と言われる。

 彼らが中学・高校に通い、大学の新入生だった1992年、アイドルグループの「ソテジワアイドゥル」がデビューした。そのファン層は脱理念、脱権威、個人主義と表現の自由が爆発した時期に「私たちはそれまでの世代とは違う」という新人類の文化独立宣言を行った。

 1990年代には大学進学率が2倍になり、国際化・情報化で海外への語学研修とバックパッカーが流行した。「千里眼」「ハイテル」など初期のインターネットコミュニティーができ、同年代と情緒的経験を素早く共有することができるようになった。当時10~20代は世間が規定できない独自の存在という意味で「X世代」と呼ばれた。

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