▲祖国革新党の曺国代表が4月4日午後、ソウル市竜山区の孝昌公園駅近くで開かれた「検察独裁早期終息、ソウル市民と共に」イベントに出席し、あいさつをしているところ。/ニュース1

 韓国の進歩(革新)系新党「祖国革新党」の曺国(チョ・グク)代表がソウル大学教授を務めていたころに、一緒に食事をしたことがある。政治的懸案をはばかることなく語りつつ、一方に偏らず、常識から大きく外れはせず、それなりに合理的だという印象を受けた。当時も、彼が政治入りするかどうかは世間の関心事だった。政治をする考えはないかと尋ねたら「選出職は関心ない」と答えた。その後、文在寅(ムン・ジェイン)政権になると民情首席に起用された。彼の言葉の通り、任命職だった。

 彼が初めて世論の俎上(そじょう)に載ったのは、文在寅政権の安京煥(アン・ギョンファン)初代法相候補者に、相手の同意なく印章を偽造して婚姻申告を行った前歴があると発覚したときだった。「曺氏は安候補者の弟子という個人的な縁があるので、人事検証で手を抜いたのではないか」という指摘が出た。当時、韓国大統領府の関係者は「結局、曺首席が文大統領も知らぬ間に安候補者を説得して、自主的に辞退させた」「後で報告を受けた文大統領が『どうして相談もなしにそんなことができるのか』と怒りをあらわにした」と語った。この時点でも、曺氏の中には常識が生きていたと信じたい。彼は、批判的な記事を書くと「どのようにしたらいいか」と個人的に尋ねに来ることもあった。言論とコミュニケーションを取ろうとする努力があった。

 曺氏が変わったのは2019年、法相指名を受けた後だ。検証が始まり、高校生の娘を巡って専門医学論文筆頭著者記載問題、東洋大学表彰状偽造問題など入試不正疑惑が噴出した。各種の不公正とネロナムブル(私がやったらロマンス、他人がやったら不倫。ダブルスタンダード)な言行が現れて、わずか35日で法相ポストから退いた。曺代表は最近、メディアのインタビューで、「あのころに戻るとしたら、法相をやるか」という質問に対し「当然やらなかっただろう」と答えた。「実際、文大統領が『2020年の総選挙に出馬しろ』と言った。特定の選挙区にまで言及して勧めてきたが、当時は本当に(出馬の)考えはなかった」とも語った。そのとき出馬していたら、彼の不正は全て覆い隠されていただろう。

 その後、曺代表の身に起きたことは、よく知られている通りだ。入試不正、青瓦台(当時の大統領府)監察もみ消しなどの容疑で起訴され、控訴審でも懲役2年の刑を言い渡された。入試不正だけでも妻の鄭慶心(チョン・ギョンシム)教授は3回、曺代表は2回、娘のチョ・ミン氏は1回と、一家合わせて6回の裁判を受け、全て有罪だった。裁判は、曺氏一家を指して「真実を語る人々に精神的苦痛を与えた」と批判した。それにもかかわらず、曺代表は「非法律的名誉回復をしたい」と称し、自分の名前と同じ発音の祖国(チョグク)革新党を作り、国会議員選挙に出馬した。似たような境地の被告人、被疑者を比例代表候補として公認した。国会議員は個人の名誉回復や復讐(ふくしゅう)のための道具ではない。法学者である曺代表が、誰よりもよく知っているだろう。

 曺代表は「尹錫悦(ユン・ソンニョル)政権早期終息」「任期短縮改憲」を主張する。いくら尹錫悦大統領に間違いが多いとしても、任期が3年以上残っている政権を覆そうとするのは、有権者に対する冒とくだ。国民のため、国のため、どちらにとっても不幸なことでしかない。本当に国を心配している人間であれば、こんな主張はできない。それにもかかわらず「チョグク党」は、各種の比例代表世論調査で25%前後の支持率を集めている。「反・尹錫悦、非・李在明」が結集した結果だろう。曺代表の当選は確実とみられる。

 彼が党を「祖国革新党」と名付けたのは、韓国を革新したいという意向からのはずだ。曺代表がつくりたい国は、どういう姿なのかと尋ねたい。不公正とネロナムブルが日常の国、犯罪者が国会議員になっても異常ではない国、国民が選んだ大統領を攻撃して座り込ませる国が、曺代表の夢見る国か。かつての曺代表であれば、「違う」と答えただろう。革新は反省から始まる、と言った。曺代表は自らに問うてみてほしい。今の自分の姿に満足しているか。大韓民国ではなくまず自分を革新すべきではないのか。

黄大振(ファン・デジン)論説委員

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