▲写真提供=ユニバーサル・ミュージック

 米国のポップシンガー、テイラー・スウィフト(34)が、世界の大衆音楽史で前例のない記録を打ち立てている。米国の経済誌「フォーブス(Forbes)」は今月2日、テイラー・スウィフトが「歌手活動だけで保有資産が10億ドル(約1500億円)を超えた初のミュージシャン」だと発表した。

 代表的なグローバル音楽チャート、ビルボードの週間アルバムチャートでも、テイラー・スウィフトはこれまでに計69週間1位に立った。これは全世界のソロシンガーの中で歴代最高だ。「ロックンロールの帝王」と呼ばれるエルヴィス・プレスリーが守り続けたそれまでの最高記録(67週)を塗り替えた。テイラー・スウィフトは今月19日にニューアルバムをリリースする。これからも多くの記録を打ち立てていくとみられる。

 それなのに、韓国ではなぜ人気がないのか。カカオエンターテインメントによると、韓国最大のオンライン音楽サービス「メロン(melon)」の月間音楽チャートで、テイラー・スウィフトのこれまでの最高順位は先月の174位だ。ポップソングなど海外の音楽だけを対象にしたメロンチャートでも、先月の15位が最高だった。韓国の市場でテイラー・スウィフトはポップシンガーの中でもとりわけ存在感が薄いといえる。インターネットでは、2011年にテイラー・スウィフトが公演のために来韓し、韓国の電車に乗った際、誰に気づいてもらえずきまり悪そうな表情を浮かべる動画が出回っている。

 海外ではテイラー・スウィフトについて、作詞も作曲もできるという圧倒的な能力を余すところなく発揮した歌手だと評価されている。特に長所として挙げられるのが、ストーリーテリングの能力だ。恋愛や悩みなど、自身のさまざまな経験を比喩を用いて歌で表現し、ファンはその歌詞を吟味しながら深く癒やされ、元気づけられるのだ。2012年の楽曲『Red』では、有名俳優との恋愛を通して成長した経験を歌い、17年の楽曲『ルック・ホワット・ユー・メイド・ミー・ドゥ』では、自身に向けられる非難にインスピレーションを得て歌詞を書き、堂々と立ち向かった。

 ファンたちはこのようにテイラー・スウィフトが歌に声を乗せて人生の荒波を乗り越えていくというストーリー構造に共感し、次のストーリーを待ちわびる。テイラー・スウィフトのもう一つの強みは、多様なジャンルに挑戦し、さまざまな楽曲を商業的に成功させる能力だ。2007年のデビュー当時は、米国の中年男性に人気のある「カントリー」ジャンルを手がけていたが、ポップス、エレクトロニック、フォークなど、全く異なるジャンルを開拓して音楽の世界を広げ、ファン層を拡大した。

 ほかにも、社会貢献に取り組む健康なイメージを構築したことも人気の要因だ。がんを患う幼いファンのもとを訪れて治療費を支援することもあれば、ファンの結婚式を祝うために一肌脱ぐこともある。スケールの大きな寄付も惜しまない。昨年は竜巻の被災者らに100万ドルを、今年初めに起きた銃撃事件の遺族には10万ドルを、それぞれ寄付した。

 このような強みは韓国でも十分に通用すると専門家らは分析する。音楽評論家のキム・ドホン氏は「テイラー・スウィフトはデビュー当初からSNS(交流サイト)で同世代のファンと活発に交流して共感し合うとともに、さまざまな大衆音楽ジャンルの遺産を忠実に受け継いだ」として「そのような汎用性が、他の歌手より幅広く人気を集める要因であり、現代のシンガー・ソング・ライターの在り方を示しているともいえる」と述べた。

 それでも韓国では人気が低調なのは何故なのか。その理由について、音楽評論家のチョン・ミンジェ氏は「作曲スタイルが、韓国人が好む起承転結の強いメロディーではない上、韓国にはIU(アイユー)など韓国独特の情緒を表現するシンガー・ソング・ライターがすでに人気を集めているため、それに比べて人気が劣っているだけ」だとした上で「テイラー・スウィフトは過去のスーパースターの系譜を受け継ぐ歌手」と述べた。

チャン・グンウク記者

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