▲グラフィック=キム・ハギョン

 「3日間頭を洗わず、ベタついた髪をゴムで縛り、パジャマの上に母親の綿入れを羽織れば、出勤コーデ完成!」

 中国の20代男性は今月初めから中国版ティックトックの抖音(ドウイン)に「おぞましい出勤コーデ」の紹介映像を投稿している。男性は「洗顔だけが出勤時に唯一の礼儀」「気に入らない服は捨てず、出勤時に着よう」などといった助言をしている。

 中国の青年たちの間で今、「おぞましい出勤コーデ」がブームだ。中国では長期化する景気低迷の中で低賃金でつらい労働に疲れた若い世代が会社で身だしなみの管理をやめ、不満を表明しているのだ。何もしないことで国家と社会に消極的に抵抗する「躺平(タンピン、じっと横になり何もしない)運動」が会社にまで浸透したと受け止められている。米ニューヨークタイムズやCNNなども中国で「不快な服装」で出勤する文化が広まっている点を連日報じている。

 発端は今年2月、抖音に投稿されたある若い女性の話だ。彼女はグレーのチェック柄のズボンとペラペラの茶色のワンピース、茶色のブーツ、赤い手袋、顔全体を覆ったマスク姿で動画に登場し、「上司が私の姿を見て、『不快だ。会社のイメージのために服装に気をつけろ』叱られた」と訴えた。この動画は青年たちを中心に140万回以上シェアされ、「いいね!」が75万件、メントが14万件付いた。反応の多くは「会社は何もしてくれないのに、注文ばかり多い」というものだった。

 その後、中国のソーシャルメディアでは、おぞましい出勤コーデが最も注目されるコンテンツになった。青年たちは先を争うように個人のソーシャルメディアアカウントに奇妙な出勤コーデを投稿し始めた。蛍光ダウンジャケット、アヒルが描かれたパジャマ、派手な色の靴下など「端正さ」とは程遠い服装ほど優秀な出勤コーデとして称賛された。わざと「物乞い」の服装を真似したり、いわゆる「モンペ」のような平べったいズボンを履いた姿もあった。

 おぞましい出勤コーデが人気を集めたのは、中国の成長が鈍化し、青年たちが低賃金とチャンスの少なさに怒っているからだ。中国のコンサルティング会社の麦可思によると、中国の大卒者の平均初任給は5833元(約12万4700円)だ。北京郊外の粗末なアパートの家賃でも6000元を超えるのに、それを下回る賃金で働いているのだ。就職1年目に月給が1万元の大台を超える割合は全体の6.1%にすぎない。北京大、清華大など名門校を卒業しても過去のようには引く手あまたではない。

 上海のIT開発者Tさんは「誰もこんなに少ない給料と福利厚生で私の代わりに働こうとは思わない。それを知っているから服装や上司の言葉をあまり気にしない」と話した。北京の外資系企業社員は「(北京郊外の)通州から中心部の国貿まで出勤する。出勤に時間がかかるのに、服装を気にしている暇はない」と語った。コロナを経験し、青年層が在宅勤務などに慣れ、通勤文化が急変したという指摘もある。

 中国の青年の間ではフリーランサー形態の労働、小規模都市での就職、宝くじ購入などが増えている。多くの青年がフリーランスの仕事やアルバイトをしながら生計を立て、未来に対する期待がないから年金納付をやめている。大都市で大学を卒業したとしても、自分が育った地方都市に戻り、仕事を探す青年も増えている。ブルームバーグは「中国の青年は経済難の中で宝くじを脱出口と見なしている」と伝えた。

 職場に対する不満を訴える青年が多いが、一方では就職に失敗して苦しむ人もいる。中国の青年失業率は昨年6月に過去最高の21.3%を記録し、7月から11月までは青年失業率発表が一時的に中断された。昨年12月からは大学の在学生などを対象から除外した新しい統計方式を採用した。北京大学の張丹丹教授の研究チームは、親に依存して生活する「啃老族(すねかじり族)」を合わせれば、実際の青年失業率は46.5%(昨年3月時点)に達すると試算した。

北京=李伐飡(イ・ボルチャン)特派員

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