▲シン・ジュンホ・最高商品責任者(CPO)

 韓国の大手ネット企業ネイバーの日本国内の関係会社で、日本の国民メッセンジャーでもある「LINE」を運営するLINEヤフーは8日、ネイバーに対して持ち株の売却を要求したことを明らかにした。LINEヤフーの出沢剛社長は8日の決算説明会で「大株主でもある委託先(ネイバー)に出資比率の変更を強く要請している」と説明した。ネイバーに対して株式の売却を正式に要求したのだ。

 出沢氏はこの要請について「総務省の行政指導に伴う措置」と明言した。出沢氏は「総務省の行政指導は『委託先(ネイバー)との資本面における支配関係の再検討』だ」「要するにLINEヤフーは大株主であるネイバーに(データ管理を)委託しているため、委託先の大株主に厳しい管理を要求できるかという問題を指摘された」と説明した。その上で出沢氏は「総務省の行政指導は重く受け止めている」と述べた。

 ネイバー出身でLINEを日本の国民メッセンジャーに育てたシン・ジュンホ・最高商品責任者(CPO)も社内取締役から退任することになり、取締役会は全員が日本人となりそうだ。これに伴い2011年の東日本巨大地震を契機に韓国の技術力で開発され、日本の国民メッセンジャーとなったLINEから韓国のカラーを完全に消そうとする日本側の動きが本格化しそうだ。

 LINEヤフーはネイバーと日本のソフトバンクが50%ずつ出資する会社で、日本最大のポータルサイトであるヤフーのサービスも提供している。昨年11月にネイバーが委託管理してきた個人情報流出事件を問題視している日本政府の圧力により、ネイバーがソフトバンクから株式の売却を求められているという事実はこれまで日本メディアなどを通じて報じられてきた。日本の総務省関係者は日本メディアに対し「LINEヤフーに対する行政指導は株式売却の強要ではない」と説明してきたが、今回LINEヤフーは日本政府の介入があったことを自ら認めたことになる。

 今回の決算説明会で出沢氏は「個人情報流出事件で多くのユーザーにご迷惑をおかけしたことを謝罪する」と述べ、その上で「大株主であるソフトバンクとネイバーは(株式の売却と買い取りに向け)協議を行っている」「(ネイバーに対する)われわれの要請はソフトバンクがマジョリティー(過半数以上)を持つことだ」と説明した。出沢氏は「ソフトバンクの孫正義会長は『今回の問題を非常に重く受け止め対応しなければならない』と考えている」とも述べた。LINEヤフーとソフトバンクは「ネイバーがLINEヤフーの株式を売却し、経営から完全に退くべきだ」という点で一致しているという。

 LINEの顧客情報を管理するネイバークラウドは昨年11月にサイバー攻撃を受け、約52万人分の個人情報が流出した。この問題を重く見た日本政府はLINEヤフーを通じてネイバーが所有する株式の売却を要求してきた。LINEヤフーの筆頭株主は64.5%を保有する持ち株会社のAホールディングスだ。ネイバーは日本のソフトバンクと共にAホールディングスの株式を50%所有しているが、1株でも売れば経営権を失うことになる。

 ネイバーが株式の売却に応じるか否かに関係なく、LINEヤフーはネイバーとの技術協力を事実上全て終わらせる作業に入ったようだ。出沢氏は「ネイバーとの委託関係を順次終わらせ、技術面では協力の関係から独立する」「韓国ネイバーとつながっているネットワークも遮断し、ネイバーとの委託関係は今後ゼロになるだろう」述べた。LINEヤフーは今年約150億円を投資し、独自のネットワークとインフラを整備する計画だ。

 取締役会のメンバーで唯一の韓国人だったシン・ジュンホCPOの取締役退陣も今回発表された。ネイバー出身の慎氏は13年前にLINEを日本に投入し、その後も運営の責任を担当してきた人物で、「LINEのアボジ(父)」とも呼ばれている。2022年に日本で最も多くの配当を受け取った上場企業役員になるなど、日本でサラリーマン神話を築いた企業経営者としても注目を集めた。シン氏も今回の決算説明会に出席し、出沢氏の隣に座っていた。個人情報流出の責任を取るための辞任と受け取られているが、ただし現在の職位(CPO)は今後も維持するという。出沢氏は「更迭とは受け取ってほしくない。セキュリティー強化の側面から社内取締役を減らし、社外取締役を増やす検討を行った結果だ」と説明した。しかし今後LINEヤフーの取締役会は全員が日本人となる見通しで、LINEヤフーに対する韓国の影響力は一気に弱まりそうだ。

 ネイバーはこの日朝、本来予定になかった緊急の取締役会を招集した。LINEヤフーの発表内容について事前にネイバーと十分な調整が行われていなかったとも考えられる。ネイバー内部では「LINEヤフーによる『ネイバー排除』はすでに始まったのでは」との懸念も語られている。ネイバー出身のシン氏が取締役を退任し、株式もソフトバンクに譲渡するようになれば、LINEヤフーに対するネイバーの影響力は当然弱くなる。

 問題はネイバーにとって選択の余地がほとんどないことだ。LINEヤフーの取締役会までがネイバー排除を求める今の状況では、ソフトバンクとの交渉で経営権譲渡によるプレミアム(割増金)を最大限受け取ることが実利にかなっていると判断するかもしれない。IT業界のある関係者は「LINEヤフーの経営においてネイバーの技術力は絶対的に重要だ。そのためネイバーとしては株式を売却した場合でもこの点を考慮し、十分な額を受け取ろうとするだろう」と予想した。ネイバーの崔秀妍(チェ・スヨン)社長は3日の決算発表会で「日本の総務省からの要求は非常に異例」とした上で「中長期的な事業戦略に基づいて決定すべき問題」との考えを示した。

 韓国政府も状況を鋭意注視している。韓国科学技術情報通信部(省に相当)の李宗昊(イ・ジョンホ)長官は同日「韓国企業が海外事業や海外投資において不当な扱いを受けないことを最優先と考えて対応する」「ネイバーの意思決定を最大限保障するため、ネイバーとも緊密に協議を行っている」と明らかにした。

東京=成好哲(ソン・ホチョル)特派員、ファン・ギュラク記者

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