▲イラスト=UTOIMAGE

 忠清南道牙山市内の病院で、治療を受けたフィリピン人労働者に対し、父親の葬儀を執り行えるようまとまった金を貸した医師のエピソードが話題になっている。このフィリピン人は困難な状況の中でも8カ月後に借りた金を返し、感謝の気持ちを伝えた。

 牙山市温泉洞にある現代病院のパク・ヒョンソ院長は今月18日、自身のフェイスブックで、昨年9月に急性甲状腺機能亢進症の発作で治療を受けたフィリピン人の移住労働者Aさんのエピソードを紹介した。

 パク院長によると、Aさんは一週間にわたる入院治療で元気になったが、退院を前にベッドに座って悲しそうに泣いていたという。フィリピンに住む父親が突然、交通事故で亡くなったということだった。

 Aさんは家長として家族を養っていた。母親はがんを患い、父親が面倒を見ていたという。弟や妹たちはまだ若いため、フィリピンの家族はAさんが稼いだ金で生計を維持していた。Aさんは「飛行機でフィリピンに帰って父の葬儀に参列したいが、航空券を買う金がない」と言って泣いていたのだった。

 パク院長は即座に100万ウォン(約11万4600円)を封筒に入れ「早くフィリピンに行ってお父さんをしっかり見送りなさい」と話したという。パク院長は「お金は私が貸すから、後で稼いで返してほしい。私が貸したということは絶対に誰にも言わないように」と伝え、Aさんの手に封筒を握らせたとのことだ。

 パク院長は「飛行機代を貸し、入院費も後日稼いでから払うように言ったのだが、すっかり忘れていた」とつづった。それから8カ月が過ぎたこの日の午後、若い外国人が診察室の外で看護師ともめていたという。診察を待つ患者が20人以上いる中で「院長先生にどうしても渡したいものがある」と言って、中に通してほしいと要求していたのだった。

 パク院長は「どこかで見たことのある顔だったので、1分だけ話を聞こうと思ったら、分厚い封筒と英語の手紙をそっと差し出して、申し訳なさそうな表情を浮かべた」と説明した。さらに「その時ようやく、Aさんが8カ月前のことを忘れずにお金を返しに来たのだということに気づき、涙があふれてきた」「彼も同じように目を真っ赤にしていた」とつづった。

 Aさんは、パク院長のおかげで父親を埋葬することができ、再び韓国に入国してカネを稼いでいるとして「返すのがとても遅くなって申し訳ない」と話したという。パク院長は「祖国で苦しむ家族にお金を送りながら、必ずお金を返そうと毎月少しずつ頑張ってためていたということを知り、涙が出た」とつづった。

 ただ、20人以上の患者が待合室で「どうしてあの人を先に診察するのか」と抗議したため、Aさんに「忘れずに来てくれてありがとう。元気で暮らしてほしい」とだけ伝えて別れたという。

 Aさんは手紙に「お金を返すのがとても遅くなって本当に申し訳ありません。先生が貸してくださったお金で父の葬儀を執り行うことができ、本当に感謝しています」とつづった。さらに「いつも先生のために祈っていました」「あらためて感謝します。そして、お金を返すのが遅くなって申し訳ありません」と気持ちを伝えた。

 パク院長は「外国人労働者のほとんどは純粋で正直だ」として「単に私たちと肌の色や言葉が違うというだけでむやみに差別し、偏見の目で見ているとしたら、Aさんのような外国人はとても心を痛めるだろう」との考えを示した。その上で「今日は100万ウォンのお金よりも、Aさんが元気な姿で帰ってきてくれたことがこの上なくうれしい」とつづった。

イ・ガヨン記者

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