▲2022年1月12日、京畿道果川中央選管員会で行われた2022年主要業務および二大選挙総合選挙対策会議で、国旗に敬礼するキム・セファン元韓国中央選挙管理委員会事務総長。写真=聯合ニュース

 韓国中央選挙管理委員会の事務総長を務めたキム・セファン氏が2022年大統領選挙と地方選挙を前に、匿名で携帯電話のサブ機を契約し、政治家たちと連絡を取り合っていたと監査院が明らかにした。選挙の公正な管理を主な任務とする選管の実務総責任者が、選挙管理の対象である政治家たちと秘密裏に連絡のやり取りをしていたということだ。

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 監査院によると、キム・セファン氏は選管の経費で利用を開始したこの「サブ機」を退職後も使用し、電話料金は引き続き選管が支払っていた。その後、監査院にこの電話が摘発されると、キム・セファン氏はデータを回復不能な状態にした上で提出した。このため、キム・セファン氏がどの政治家とどのようなやり取りをしていたのかは確認できていない。韓国の政界では「秘密裏に連絡を取り合っていたという事実だけでも、選管の公正性に対する公共の信頼が揺らぐ可能性がある」との指摘が出ている。

 監査院はキム・セファン氏の息子の縁故採用など、選管の人事不正を監察する過程で、サブ機に関する内容を確認した。監査院は先月27日、このような内容を盛り込んだ選管監査報告書を発表したが、憲法裁判所は同日、「選管は監査院の職務監察対象ではない」として、監査院の監察は違憲だと決定した。与党・国民の力は翌28日、「特別検察官に準ずる特別監査官を任命し、期間を限定して選管の監査を可能にする特別監査官法を党論として発議し、選管に対する国政調査と選管事務総長任命に対する人事聴聞会の導入も推進する」と明らかにした。

■元選管事務総長、サブ機摘発されるやデータ消去し返却

 監査院が先月27日に発表した選管監査報告書によると、キム・セファン氏は2022年1月に中央選管情報政策課のA課長を呼び出し、「官邸で使わなければならないから携帯電話を持って来い」と指示した。A課長は契約担当部署には知らせないまま、情報政策課の経費で携帯電話を新規に契約し、キム・セファン氏に渡した。この電話は個人名義ではなく、「選管業務用」なので、通信記録だけではキム・セファン氏が使用していた事実は確認できない。

 監査院は2023年6月から選管を監査する過程でこの「サブ機」の存在を知った。キム・セファン氏は2022年3月に退職したが、この携帯電話を持ったままだった。監査院はキム・セファン氏に携帯電話の提出を要求し、キム・セファン氏は2023年11月に中央選挙管理委員会に携帯電話を返却した。ところが、「工場出荷状態に初期化」されるなどしてデータが完全に削除された状態だった。監査院はデジタル・フォレンジック作業をしてもデータ復旧が不可能だと判断した。

 キム・セファン氏は監査院の調査に対し、当初は「携帯電話はA課長が自発的に持ってきてくれたものだ」「業務的に必要ではなかった」と主張していたが、後に「政治家たちと連絡をするサブ機として使った」と話を翻した。政治家たちとどんな話をしたのかについては「それぞれ違っていたが、その部分までは言えない」と答えた。携帯電話を退職後も持っていたことについては、「官舎にあった荷物を職員がまとめて入れてくれただけだ」と主張した。しかし、監査院は、選管職員がキム・セファン氏の官舎の荷物をまとめる作業をしていなかったことを突き止めた。

 監査院はまた、選管がキム・セファン氏に携帯電話の返却を要求しなかっただけでなく、この携帯電話の料金を支払い続けていたこともつかんだ。だが、キム・セファン氏の通話・メッセージ内容を具体的に解明することはできず、この件については官用物品無断持ち出し容疑のみを適用して送検した。

 選管のある関係者は「国会で選挙法や選管法の改正が続いているため、選管事務総長は対国会業務が多い」と説明した。だが、「国会議員をはじめとする政治家との連絡を本人名義の電話ではなく別名義にし、その内容も残さないのは異例だ」と指摘する声が上がっている。

金耿必(キム・ギョンピル)記者

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