2023年8月、全羅北道の干潟「セマングム」で開催されたボーイスカウト・ガールスカウトの世界大会「第25回世界スカウトジャンボリー(セマングム・ジャンボリー)」で数多くの問題が発生したのは、大会組織委員会、監督機関の韓国女性家族部(省に相当、以下同じ)、大会を招致した全羅北道=現:全北特別自治道=の不良・無責任行政が重なって起きたためだった、と監査院が10日に結論を下した。

【写真】100億円使ってこのありさま…国内外から批判を浴びたセマングム会場

 監査院が同日発表した監査報告書によると、全羅北道は2015年、キャンプには不向きな干潟であるセマングムをジャンボリーの招致場所に決めたという。セマングムは水はけが悪く、雨が降ると何日間も浸水する場所で、日陰になるような樹木などもなかった。全羅北道は韓国スカウト連盟に「2019年までに用地基盤施設開発を完了させ、参加者にとって日陰になるよう、ポプラの木を10万本植える」という内容の開催計画書を提出した。

 ところが、監査院は「この計画書は虚偽だった」としている。全羅北道が計画書を提出する前に、用地開発は「2022年完了」と変更されていた状況で、干潟だった場所に木を植えることが可能かどうかは検討すらされていなかった。

 この計画書を基にセマングムは韓国の世界ジャンボリー招致候補地に選定され、1991年に世界ジャンボリー開催を成功させた経験のある江原道高城郡は選ばれなかった。監査院が当時の用地選定評価委員らに尋ねたところ、全員が「計画書が虚偽だと知っていたら、セマングムを評価対象から除外したか、不利益を与えるかしただろう」と答えた。

 全羅北道は2017年9月になってやっと、文在寅(ムン・ジェイン)政権と当時与党だった共に民主党に「農地管理基金を使って用地を埋め立ててほしい」と要求した。農林畜産食品部は農地造成にしか使用できない同基金で用地を埋め立てることは法令違反に当たると分かっていたが、大統領府の「再検討」要請を受け、1845億ウォン(現在のレートで183億円)かけて用地を埋め立てた。一方、ポプラの木10万本の植樹は、土壌に塩分が多く含まれていて不可能であることが分かり、プランターやつる植物のトンネルを設置して日陰を作るという代案も、予算不足などを理由に実現しなかった。

 国会は2018年、「セマングム世界ジャンボリー法」を制定してジャンボリー組織委員会を構成し、女性家族部に監督させた。このため、ジャンボリーの運営に関して専門性が高いスカウト連盟はほとんど関与できなくなった。女性家族部は組織委員会の事務総長に退職目前の公務員を就任させたが、この公務員は国際行事の経験がなかった。組織委員会の職員159人のうち、国際行事の経験がある職員は10人に過ぎなかった。

 組織委員会は猛暑対策の備品・食事・医療・防除・廃棄物処理・トイレ清掃などほとんど全ての分野において準備が不十分だった。猛暑警報が発令され、熱中症患者が殺到したのにもかかわらず、参加者には1日にミネラルウオーター1本しか支給されなかったが、これも組織委員会が「水道水を飲めばいい」と判断したためだった。食材保管棚は野ざらしでカビが生え、食材配送遅延で食事を欠く参加者も出た。2023年8月5日の政府会議で、韓悳洙(ハン・ドクス)首相が「トイレの掃除ができていない所がある」と指摘すると、組織委員会事務総長は「それがどうかしたんですか?」と問い返した。

 女性家族部は組織委員会を支援するために部内に設置した「ジャンボリー支援団」のポストを閑職として扱い、6回の現場点検も、具体的な計画もなく現場を見回るだけだったという。当時の金賢淑(キム・ヒョンスク)女性家族長官らはジャンボリーの準備が完了していないということを知りながらも、開幕1週間前の国務会議(閣議)で「準備完了」と報告した。 このため、監査院は「他部処(省庁)の人材投入など政府レベルの補完対策を用意する事実上最後の機会を逃した」と指摘した。

 監査院は女性家族部と全羅北道に「機関注意」を与え、女性家族部・全羅北道・全羅北道教育庁に公務員5人を懲戒処分するよう言った。既に退職して懲戒処分が不可能な7人に対しては、後に公務員として再任用されないよう、不正内容を記録として残すことにした。ジャンボリー準備状況の虚偽報告などに関与した6人は懲戒処分とは別に捜査機関に引き渡し、捜査を受けさせることになった。女性家族部と全羅北道はそれぞれ「監査結果を謙虚に受け止める」とコメントした。

金耿必(キム・ギョンピル)記者

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