韓国の憲政史上初めて検察の特殊活動費(特活費)・特定業務経費(特経費)が「0ウォン」に削減された今年、各種の犯罪の検挙実績が大幅に下落していることが15日に判明した。

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 法務部(省に相当)が保守系の「国民の力」に所属する具滋根(ク・ジャグン)議員に提出した資料によると、裁判所で実刑を宣告されても逃走した「自由刑(懲役・禁固・拘留)未執行者」の今年1月の検挙人数は217人だった。昨年の月平均検挙実績(301人)に比べ、30%ほど減っている。捜査機関の関係者は「自由刑未執行者は、裁判所で懲役・禁固などの実刑を言い渡されても街を闊歩(かっぽ)している犯罪者」だとし「この中には凶悪犯も少なくない」と指摘した。さらなる犯罪を防ぐため検挙が必要だが、その実績が今年に入って鈍化したのだ。

 不特定多数を対象に行われるボイスフィッシング(電話で個人情報を聞き出す詐欺の手口)の組織検挙率も、昨年に比べて半分の水準に落ちた。検察は2022年から、フィリピンで活動するボイスフィッシング組織の責任者やメンバーなどを検挙する目的で専担捜査官を現地に派遣している。今年からは特活費・特経費が0ウォンになり、この捜査官らに一文たりとも捜査経費を支給していない。フィリピン現地に派遣された専担捜査官は、昨年までボイスフィッシング犯を月平均1.25人検挙していたが、今年に入ってからは3月までの検挙実績は月平均0.66人に減った。

■麻薬事犯を捕まえる偽装取引も「0件」

 特経費は、捜査に要する費用を充当するために支給される経費だ。特活費は、機密維持が要求される捜査・情報活動に用いられる。犯人検挙や令状執行の過程で要する費用、麻薬の偽装取引、違法賭博サイトの加入費など、他の予算項目で処理し難いところに特活費を使う。ところが昨年の予算国会で検察の特活費・特経費予算が0ウォンに削減されたことで、検察の捜査活動に影響を及ぼしたのではないか―という指摘が出ている。

 国会が検察の特活費・特経費を全額削ったことで、一線の捜査現場からは士気の低下を訴える声が出ている。こうした雰囲気は捜査関連の指標でも感知されている。例えば検察の家宅捜索令状の請求件数は、今年1月現在で254件。昨年の月平均424件と比べて40%減少した。今年1-3月のデジタル鑑識捜査官の現場支援件数(407件)と人員(695人)も、昨年の同じ期間(736件・1100人)に比べて大幅に減った。

 今年1月現在、麻薬事犯を検挙するために活用する偽装取引の試みは1件もなかった。偽装取引は、1件につき400万ウォン(現在のレートで約40万円。以下同じ)ほどの捜査費がかかるという。今年は特活費の削減で偽装取引に使える予算が一文も配分されなかった。昨年の検察による麻薬事犯検挙のための偽装取引は33件(月平均2.75回)だった。ある部長検事は「捜査官の間から『自腹で捜査が今年のトレンド』という自嘲も出ている」と語った。今年1月に検察は釜山の金海空港で麻酔薬「ケタミン」の密輸犯2人を検挙し、ソウル・仁川・京畿金浦などを渡り歩く共犯2人をさらに検挙した。ところが捜査官の食費などは、担当検事が私費で負担したという。

 昨年、韓国政府は、今年の予算案で検察の特活費・特経費として587億ウォン(約59億円)の予算を組んだ。しかし進歩(革新)系の「共に民主党」は「証憑(しょうひょう、証拠)書類が備えられていない」などの理由で全額を削って一方的に処理した。民主党は韓国警察庁の予算審査の過程でも、政権退陣要求集会に関連する警察の対応を問題にして「警察庁長が謝罪しないのなら(警察予算を)細かく問い詰める」と主張した。最終的に、今年の予算では警察の特活費も全額削られて0ウォンになった。逆に、高位公職者犯罪捜査処の場合、特活費1億1100万ウォン(約1120万円)、特経費4億1800万ウォン(約4210万円)が削減なしで政府案通りに通過した。

キム・ヒョンウォン記者、ユ・ヒゴン記者

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