韓米関係
「通商交渉で成果がなければ首脳会談なし」 30人超と首脳会談を行ったのに李在明大統領とは会わないトランプ米大統領
米国のドナルド・トランプ大統領の通商交渉圧力が、発足から1カ月ほどたったばかりの李在明(イ・ジェミョン)政権の外交にとって大きな試験台になっている。魏聖洛(ウィ・ソンラク)安保室長が米国を訪問し、マルコ・ルビオ国務長官兼大統領補佐官代行(国家安全保障問題担当)と会って関税・安全保障両面の問題を解きほぐそうとしたが、米国側は通商交渉の進展を首脳会談と連携させるかのような態度を見せているという。ある外交消息筋は「米国側が、通商交渉の成果がなければ首脳会談もないという形で言っており、会談推進は具体的段階に進むことができていないらしい」と語った。
【表】日本(25%)は「上方修正」 韓国(25%)は「維持」…14カ国に通告された米相互関税
7日(現地時間)の魏室長とルビオ長官の会談は、「来月1日から全ての韓国製品に25%の相互関税を賦課する」というトランプ大統領の書簡が公開された後に行われた。韓国大統領室は、この日の会談で韓国側が「速やかに韓米首脳会談の開催を通して諸般の懸案において相互互恵的な結果を進展させていくことを希望する」と述べ、これに米国側は「共感を示した」―と伝えた。外交協議で首脳会談が確定すれば「いつ、どこで首脳会談を開催すると合意した」と発表するものだが、具体的な日程を確定させることはできなかったのだ。
米国側は「韓国を含む主要国を対象に関税書簡がきょう発送された」とし「実際に関税を賦課する時点である8月1日まで時間があるだけに、両国がその前までに合意に至るため、緊密にコミュニケーションを取っていきたい」と述べたという。韓米首脳会談についての明確な回答を避け、まず通商交渉の妥結を急ごうという意味だ。
これに関連して韓国大統領室は7日午後、金容範(キム・ヨンボム)政策室長主宰で「対米通商懸案関係部処対策会議」を開いた。金室長は、米国と最終合意をするには新政権発足後で時間が足りず「速やかな協議も重要だが国益を貫徹することの方が重要な価値」だと表明したという。関税交渉の妥結のために「速度戦」を展開するつもりはない、という意味だ。
特に、非関税障壁問題が韓米関係において大きな障害になっているといわれている。外交消息筋は「米国は“通商交渉がうまくいけば、あすにでもすぐに首脳会談をやろう”という形だが、精密地図データの持ち出し、牛肉・コメ輸入制限の緩和などは韓国政府としても容易には受け入れられない問題」と語った。
李大統領は、大統領選挙候補時代の今年5月、関税交渉について「われわれが真っ先に乗り出して、急いで交渉を早期妥結させる必要はないだろう」と発言した。現在も韓国政府は「交渉が長引くほど米国の足場は狭まる」と判断しているという。しかし韓米首脳会談が遅延している状況で米国が在韓米軍の再調整などに着手したら、李在明政権の安全保障面・政治面での負担も大きくなることは避けられない。大統領室も、これを認識していると伝えられている。
トランプ大統領の第2期の任期が始まった後、これまでホワイトハウスで会談したり会談する予定になっていたりする各国首脳、および中東3カ国歴訪時に会談した首脳、2度の多国間首脳会議(G7=先進7カ国・NATO=北大西洋条約機構)出席時に会った首脳を合わせると、軽く30人を超えるものとみられる。トランプ大統領は9日(現地時間)にアフリカ5カ国(ガボン、ギニアビサウ、モーリタニア、リベリア、セネガル)の首脳とも会談する予定だ。アフリカ北部・西部に位置するこれらの国々はマンガン、ウラニウム、ボーキサイトなど鉱物資源が豊富なことで知られている。
複数の専門家が、トランプ大統領の関心事である造船協力と国防費増額など幾つかの懸案を一挙にテーブルに乗せ、韓米首脳会談を実現させようとする努力を強化すべきだと考えている。朴元坤(パク・ウォンゴン)梨花女子大教授は「トランプ大統領は経済と安全保障を関連付ける考えが明らだが、李在明大統領がどれほど米国の対中けん制や安保戦略に関与するのか確認されていない状態」だとし「両国首脳が会って通商・安保全般の談判をする必要がある」と語った。
ただし、首脳会談そのものが関税問題の解法ではない、という指摘もある。石破茂首相はトランプ大統領とたびたび会談や電話会談を行った。しかし「トランプ書簡」で日本に対する米国の相互関税は、従来の24%から25%へと1ポイント上がった。世宗研究所の金顕或(キム・ヒョンウク)所長は「関税交渉関連の細部事項がある程度解決した後に首脳会談をするのがよい」とし「解決したものがない状態で会ったら、トランプ大統領がまた雑音を立てる可能性がある」と語った。
パク・サンギ記者、鄭智燮(チョン・ジソプ)記者