▲写真=UTOIMAGE

 米国を代表するファストフードチェーンのマクドナルドが香港の一等地にある自社店舗物件を大量に売却することを決め、波紋を広げています。香港に23カ所の自社物件を持っていますが、このうち尖沙咀(チムサーチョイ)、銅鑼湾(コーズウェーベイ)、荃湾(チュエンワン)、鰂魚涌(クオリーベイ)など中心部にある8店舗を9月に実施する入札で処分することを決めたのです。残る店舗は来年売却するといいます。売却規模は全体で30億香港ドル(約564億円)に達するとの観測が出ています。

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■香港進出50周年のタイミングで出た売却報道

 今年はマクドナルドの香港進出50周年に当たり、さまざまな記念行事が開かれています。そんなさなかにマクドナルドが香港にある自社物件を全てを売却すると報じられ、地元ではその背景に対するさまざまな観測が聞かれます。

 地元ではマクドナルドが香港の不動産市場の将来をそれだけ悲観しているのではないかという見方が有力です。2020年の国家安全法施行以後、香港の商業用不動産市場は下落傾向が続いており、それでも価格下落が鈍った局面で売り抜けようとしているのではないかとみられているのです。香港を代表する富豪である李嘉誠氏が率いる長江グループもここ数年間に保有する不動産を大規模に売却してきました。

 米中衝突に備えた政治的な考慮が大きいとの分析もあります。米中衝突が起きた際、香港にある資産が中国の政治的カードにならないように、あらかじめ処分しておこうという意図があるのではないかというのです。

 香港経済日報は7月28日、マクドナルドが香港にある全23店舗を段階的に売却すると報じしました。年内に尖沙咀など中心部の8店舗を優先的に売却し、価格は13億香港ドルに達すると予想しました。

 マクドナルドも翌日に報道内容を認め、米不動産コンサルティング会社ジョーンズ・ラング・ラサール(JLL)が9月16日に8店舗に対する入札を実施すると発表しました。ただ、店舗売却後も長期賃貸契約で店舗は維持するので、香港のマクドナルドの店舗が減るわけではないと説明しました。

 今回の売却対象で最も象徴的な場所は、香港の尖沙咀にある商業ビル「スターハウス(星光行)」内の店舗と地下倉庫。全体面積は400坪ほどだが、時価は4億6000万香港ドルです。2019年には時価が10億香港ドルに達しましたが、ここ数年の不動産市場低迷で半分に下落したそうです。銅鑼湾の怡和街と荃湾街市街(マーケットストリート)の1・2階の店舗と地下なども売りに出されました。

 マクドナルドは今回の入札結果を見極めた上で、来年は残る15店舗も相次いで売却するということです。香港メディアによれば、賃貸収益が確実に得られる立地であることから、多くの投資家が関心を示しているといいます。

■店舗数は維持

 マクドナルドはハンバーガーの販売が副業で、本業は不動産と言われるほど世界各国に不動産を保有しています。保有規模は300億ドルをはるかに超えると報じられたこともあります。世界の主要都市の一等地の店舗を購入した後、加盟店に高く賃貸する形で収益を上げているのです。数十年間営業をして店舗価値が十分に上がると、売却して差益を得ることもあります。

 マクドナルドは1975年の香港進出後、中心部に25店舗を保有し、2021年にうち2店舗を売却しました。しかし、今回のように保有物件を全て処分するのは初めてです。香港経済日報は「マクドナルドが今年初めから売却を準備してきた。8店舗の売却入札の反応が良ければ、来年には残る物件も全て売却するだろう」と伝えました。

 今回の売却でマクドナルドが香港から撤退するわけではありません。マクドナルドは2017年、中国中信集団(CITIC)のコンソーシアムに中国本土・香港地域の20年間の営業権を売却し、店舗網は中国資本によって維持されます。香港には256カ所のマクドナルドの店舗があり、雇用人数は1万5000人に上ります。

■米商務省、香港資産の処分勧告

 マクドナルドは今回の売却について、「グループ内の不動産ポートフォリオを調整することが目的」としています。地元ではマクドナルドが不動産価格がさらに下落するとみて売却に乗り出したのではないかという観測が有力です。香港の商業用不動産市場は2022年からの2年半で下落率が累計26.6%に達するほど下落傾向が顕著です。

 単なる商業的な動機ではなく、政治的考慮が作用したという分析も出ています。地場経済メディア「etnet」のコラム「魚缸博客」は「マクドナルドは現在よりも相場が下落した2003年SARS流行時にも店舗を売却しなかった。政治的考慮があると考えるのが合理的だ」と分析しました。香港にあるマクドナルド店舗が米中衝突時に中国の政治的カードになることを防ぐために、相場が良い時に売却する意図だとの見方です。

 フランスの国際放送ラジオ・フランス・アンテルナショナル(RFI)も「米商務省は数年前から香港にある米国の大企業に香港の資産処分を検討するよう勧告してきた」とした上で、米ラジオ・フリー・アジア(RFA)も昨年3月、香港勤務の職員が国家安全法に関連して中国の交渉カードにならないよう、香港支局を閉鎖したと指摘しました。

崔有植(チェ・ユシク)記者

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