社説
韓米首脳会談前に「李在明大統領は親中」という疑念を増幅させた大統領府報道官【8月6日付社説】
韓国外交部(省に相当)の趙顕(チョ・ヒョン)長官は米メディアとのインタビューで「中国は周辺国にとって多少問題になっている」とした上で「南シナ海と西海における(中国の)行動をこれまで見守ってきた」「中国が地域の懸案を巡って国際法を順守する姿を見たい」などと述べた。正しい内容であり至極当然の発言だ。
【写真】「共同民主党リー・ツァイミン総統候選人」 共に民主・李在明候補の選挙カーが中国語で投票呼びかけ /安山
ところがこれに対して駐韓中国大使館は「中国は国連体制、国際法を基盤とした国際秩序、国際関係の基本的な規範を固く守ってきた」と反論し「全ての周辺国と良好な関係を維持している」と主張した。現実と完全に食い違う強弁だ。
韓国と中国は2001年、それまで海上境界線を確定できなかった西海に暫定水域を設定し、漁業以外の行為は一切行わないことを約束した。ところが中国はこの暫定水域に「養殖用施設」として大型の移動式構造物2基と鉄製の杭を海に打ち込んだ固定構造物を設置した。ここにはヘリポートもある。この「人工島」を拠点に西海の占有をもくろんでいるのだろう。韓国の海洋調査船が近づくと武装した民間ボートが接近を阻んだ。今年5月には西海の一部に航行禁止区域を宣布し空母艦隊の訓練まで行った。暫定水域設定前に建設された離於島海上科学基地にも中国は難癖を付けているが、これも西海を中国の内海にするためだ。これでは趙顕長官が語った「多少問題」というレベルではなく他国の領土主権の侵害だ。
中国による南シナ海での行動も無道という言葉では表現できない。中国から遠く離れた、地中海よりも広い海域のほぼ全てを自国の領海と主張している。他国の沿岸まで自分たちの海と強弁する中国の主張は国際司法裁判所でも退けられたが、中国はこれも完全に無視し、その後も砂州にセメントを注いで人工島を建設しこれを軍事基地とした。中国がフィリピン沖合で行っている海上での武力行使は明らかに不法な暴力だ。国連中心あるいは国際法に基づく秩序に堂々と違反しているのだ。
ふに落ちないのは韓国大統領府の動きだ。趙顕長官の発言に間違いはないが、これについて韓国大統領府は「趙顕長官の発言は、韓中両国に一部意見の違いがあるとしても、地域に貢献する関係を築くため引き続き努力するという趣旨」と説明した。中国に向けた弁解とも受け取れる内容だ。中国は不法構造物や軍事力により韓国の西海主権を侵奪する動きを示しているが、韓国大統領府はこれについて一切言及しなかった。習近平国家主席の来韓を実現させるためだとしても、国の主権は交渉や取引の対象にはなり得ない。
米国のトランプ政権は「李在明(イ・ジェミョン)大統領は親中」という疑念を抱いている。近く行われる韓米首脳会談を前に韓国大統領府がトランプ大統領のこの疑念をさらに膨らませてしまえば、国益に何のプラスにもならない。