▲尹錫悦・前大統領の金建希夫人が8月6日、ソウル市鍾路区に立ち上げられた金建希特別検事チーム(特別検事:閔中基〈ミン・ジュンギ〉)の事務室で事情聴取を受けるため出頭したところ。/写真=ニュース1

 尹錫悦(ユン・ソンニョル)前大統領の金建希(キム・ゴンヒ)夫人が6日、特別検事(特検)に出頭した。選挙候補公認への介入、ドイツ・モータース株価操作介入、乾津法師請託疑惑など金建希夫人に適用された捜査対象だけでも16件に上る。事実として立証された場合、重大犯罪に該当しかねない。金建希夫人は相当数の疑惑を否定しているが、公認介入疑惑に関してはこれを立証できる金建希夫人の電話録音まで出て来ている。

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 金建希夫人は特検に出頭する際、「私のようになんでもない人間がこのようにご心配をおかけして心からお詫びする」とコメントした。自分の問題について初めて自ら謝罪したが、あまりにも遅すぎた。2022年、金建希夫人が北朝鮮寄りの人物から300万ウォン(現在のレートで約32万円)台相当のディオールのバッグを受け取ったという事件が起きたとき、多くの人物やメディアが金建希夫人の謝罪が必要だと主張したが、金建希夫人は徹底して無視した。そんな傲慢が他の疑惑へとつながることは避けられず、戒厳と弾劾、特検までもたらすに至った。金建希夫人が3年前に心から謝罪して身の処し方を改めていれば、今の大統領は尹錫悦だっただろう。

 尹・前大統領の戒厳自爆にはいくつもの理由があるだろうが、金建希夫人特検法問題も作用した可能性がある。金建希夫人問題で尹・前大統領と韓東勲(ハン・ドンフン)元「国民の力」代表の対立が頂点に達し、当時与党だった保守系の「国民の力」の分裂で金建希夫人特検法が国会を通過する危機が高まるや、尹・前大統領は戒厳という極端な行動に出た、というわけだ。

 尹・前大統領は金建希夫人問題を巡る多くの善意の苦言に憤怒で答え、全て無視した。だから今、その数倍の強さで特検の捜査を受けることになった。理性を失った頑迷な「夫人救援」が、正反対の結果をもたらしたのだ。

 金建希夫人の犯罪容疑は特検の捜査で明らかにされるだろうが、金建希夫人が及ぼしたより大きな害悪は別にある。何の公的権限もない人物が事実上、大統領の役を果たす形になっていた。金建希夫人が公職人事に関与しているといううわさは、政権発足当初から官界では定説として通っていた。執務室で決定された人事が大統領の退勤後、官邸で覆されたという話まで出た。さらには、金建希夫人が高位公職者の候補に内定事実を通知することもあったという。

 国家機密を扱う大統領や軍・情報機関のごく少数の公職者のみが使う秘話フォン(盗聴防止機能付き携帯電話)を金建希夫人が使っていた事実も発覚した。金建希夫人に秘話フォンが提供されたということ自体が正常ではない。金建希夫人は「当選したら内助のみをやりたい」と言っていたのに、やっていたのはその反対のことばかりだった。周囲で「これではだめだ」と忠言した人々は、ほとんどが追い払われたり、自ら辞めたりした。そんな不通によって、最終的に尹・前大統領は弾劾され、政権を失い、今の特検へと至った。李在明(イ・ジェミョン)政権はこのことを反面教師にすべきだ。

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