金融・財政
韓国の2000億ドル対米現金投資、外貨準備高には手を付けず外貨資産収益・起債で年200億ドル調達
韓米関税交渉で最大の難題だった現金投資規模とについて、韓米首脳は29日、総投資額3500億ドルのうち2000億ドルを現金出資で投資することに合意した。投資期間は明示せず、毎年最大200億ドル規模とすることが決まった。大統領室は年間200億ドルという投資額について、「韓国の外国為替市場が耐え得る範囲だ」と述べた。ただ、韓国が投資するプロジェクトの選定権限などについては、対立の火種が残っている。「商業的合理性のあるプロジェクトのみを推進する」という合意があるだけで、米国の「善意」に頼る構造だという指摘も聞かれる。
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■2000億ドルは現金投資
大統領室は韓米首脳会談の直後、3500億ドルの対米投資に関連し、内訳は現金投資2000億ドル、造船業協力1500億ドルになると発表した。金容範(キム・ヨンボム)政策室長は記者会見で「2000億ドルの投資は一度になされるのではなく、年間200億ドルの限度内で事業進展度合いによってドル建てで投資を行う」と説明した。金室長は「事業が成立したからといっても、一度に資金を送ることはない。事業の進展程度によって送るため、最初は手付金程度にしかならない」と強調した。
年間200億ドルの投資は韓国銀行と企画財政部が明らかにした「外国為替市場に衝撃を与えずに調達できる最大規模」(年間150億~200億ドル)の上限に当たる。金室長は年間200億ドルの調達方法として、「韓国の外国為替市場で直ちに調達するのではなく、外貨資産の運用収益を活用していく」とし、「利子、配当など運用収益が少なくなく、かなり活用できる見通しで、一部を起債で賄う場合は政府保証債になりそうだ」と説明した。産業銀行や輸出入銀行のような国策銀行が国際金融市場で十分に資金調達できるとの立場だ。大統領室は同日、「投資契約期限」をトランプ大統領の任期である2029年1月までとし、その期間内にプロジェクトを確定するとした。
■投資主体は米商務省、韓国政府と協議
投資プロジェクトの選定は、米商務長官が委員長を務める投資委員会が行う仕組みとなる。韓国産業通商部長官が協議委員長を務め、相互協議を行う。金室長は「元利が保障される商業的合理性のあるプロジェクトだけを推進することに合意し、それを覚書案に明示する」とし、「商業的合理性とは投資委が投資金額を十分に回収できるキャッシュフローが保障されると善意に従って判断する投資を意味する」と位置づけた。
問題は、韓国側の協議委員会が投資先選定にどれほど権限を持つかだ。協議委が投資委に意見を提示することができ、投資委は協議委にプロジェクトの詳細情報を提供することになっているが、双方の意見が対立した場合、どうなるかは不明だ。
■利益は折半 元金回収までは5対5 その後は不透明
金室長は「元金回収の可能性を高めるための多層的安全装置を設けた」とし、「元利償還(投資回収)までは韓米で収益を5対5で配分するものの、20年以内に元利を全額償還できないとみられる場合は収益配分比率も調整可能だ」と指摘した。
韓国政府が当初要求した収益配分比率(韓国9、米国1)を大きく下回った。米国側は「既に対米投資交渉を終えた日本と元金回収は5対5で配分することにしたため、公平性の面でこれを守るしかない」と主張した。ただ、元金回収後の収益配分はどうするのかは不明だ。
今回の合意によると、米国が韓国に課す自動車関税は25%から日本と同じ15%に引き下げられる。ただ、実際に関税引き下げられるには両国が覚書を締結し、トランプ大統領が大統領令に署名しなければならない。金室長は「覚書案はほとんど完成している」とし、「これを実行するためには対米投資ファンド創設などのための法律を制定する必要がある」と述べた。その上で「法案が国会に提出された時期の初日(1日)に遡及して関税を引き下げることになった」と説明した。11月に法案が提出され、以後国会で可決されれば、関税引き下げの時点は11月1日に遡及適用されるという意味だ。
キム室長は国内手続きについて、産業通商部長官と米国側代表が公式署名を終え次第始まるとした。米国と欧州連合(EU)も合意後、EUが関連法案を議会に提出し、米国はEU製自動車に対する関税を15%にする大統領令を出した。韓国政府が対米投資ファンド創設の必要条件としていた韓米通貨スワップは合意に含まれなかった。大統領室は投資を長期にわたり分割して行うことになったため、通貨スワップは不要との立場だ。
慶州=キム・テジュン記者