▲写真=UTOIMAGE

 「私たちの選択肢に『失敗』はない」

 今年6月に台湾で公開された半導体産業に関するドキュメンタリー映画「造山者(A Chip Odyssey)」に繰り返し登場するコメントだ。 台湾政府が1976年に最初の「半導体研修生」19人を選抜して米国に派遣する際、当時の孫運璿経済部長(経済相)が彼らに発した言葉だ。1970年代、台湾は中国の台頭で国連から追放され、米国などと断交し、国際社会で存立の危機に直面していた。生き残りのための突破口として若いエンジニアたちに国家の未来を託し、先端産業誘致に全力を挙げた時代の悲壮さがこの一言に込められている。

【写真】台湾半導体産業に関するドキュメンタリー映画「造山者(A Chip Odyssey)」の一場面

半導体産業の基盤が皆無だった台湾は、50年間で世界最大の半導体生産国に浮上した。神話のような彼らの成功要因には定説が存在する。追い詰められた政府による全面的な投資、ファウンドリー(受託製造)という新たな事業モデルを台湾に移植した台湾積体電路製造(TSMC)の創業者、張忠謀(モリス・チャン)のビジョンとリーダーシップ、殺人的な仕事量の中で工場を24時間フル稼働した労働者の犠牲などが代表的な理由に挙げられる。

 しかし、映画はそんなありきたりなストーリーを単純に繰り返す内容にはとどまらなかった。蕭菊貞監督は、台湾政府の半導体草創期のプロジェクトに関わった80人余りに直接会い、生の声を盛り込んだ。当時20代の青年だった研修生らは白髪の老人になった現在でも「失敗はあり得ない」という当時の重圧感を思い起こしながらカメラの前で涙を流した。蕭監督は、「無から有を創造しなければならなかった当時、政府官僚と第1世代のエンジニアの苦労と犠牲がなかったならば、現在の成功は不可能だったというメッセージを後世に伝えたかった」と語った。

 最近台湾外交部の招待で、蕭監督と同映画の総括プロデューサー、蒋顕斌氏に会った。蒋氏は記者に「以前会った韓国の観客が私に『韓国の産業発展史とあまりに似ていて感動した』と語ったが、韓国にはこういうドキュメンタリー映画がありませんか」と尋ねた。20年前に放送されたドラマ「英雄時代」以外には韓国の主力産業や企業家を扱った作品は特に思い浮かばなかった。奇跡的な産業発展に対する記録、その礎を築いた先代に対する称賛が韓国の大衆メディアでは事実上消え去った現実を改めて残念に思った。

 我々の前世代は韓国人のDNAに刻まれたことがなかった「企業家精神」を新しく注入したが、最近10年余りでその流れが衰退どころか、朝鮮王朝時代の士農工商レベルにまで退化しているのが現実だ。どうしてこうなってしまったのか。長々と説明するには時間が足りず、「韓国には反企業感情が強く、こういう作品は生まれにくい」と苦々しく答えるしかなかった。「失敗はない」という信念で荒れ地を切り開いた台湾人のように、我々も未来のために差し迫った思いで問いを投げかけなければならない。

台北=リュ・ジェミン特派員

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