▲イラスト=ソン・ユンヘ

 「ストリートファッション(若者が好むラフなスタイルの服)系のブランドを着て限定版のスニーカーを履いている」「IT機器のトレンドにいち早く乗って、積極的に消費している」「最新の流行語に詳しい」…。

【イラスト】韓国で嘲笑される「ヤングフォーティー」のイメージ

 これらは最近インターネットで出回っている「ヤングフォーティー自己診断チェックリスト」の一部だ。「ヤングフォーティー」とは、「若い(ヤング)40代(フォーティー)」を意味する。自己診断で高得点だった40代は「自分は中年にしては若いんだな」と喜ぶべきなのか。いや、違う。むしろ、反対かもしれない。ヤングフォーティーという言葉は10年ほど前に初めて登場した。当時は、これまでの中年とは違う「トレンドに敏感で若者風のものを楽しむ40代」を肯定的に表現する言葉だった。しかし今では「若者ぶってる老害オヤジ」という意味で使われる。サイバー空間には、ヤングフォーティーをあざ笑うようなコンテンツがあふれている。自己診断チェックリストもその一つだ。「ヤングフォーティー」がよく着ているブランドをお腹の出ている中年男性に合成したAI画像も出回っている。

 ヤングフォーティーをあざ笑う風潮は、主にMZ世代(1980年代初め-2000年代初め生まれ)が主導している。専門家らは「MZ世代が感じている挫折感と相対的剥奪感を反映したものだ」と分析する。MZ世代は雇用不安や住宅価格の急騰、景気低迷という状況に置かれ、チャンスのドアが閉ざされた時代を生きている。MZ世代から見れば、ヤングフォーティーは相対的に運のよかった世代だ。ヤングフォーティーが社会に踏み出した頃は今より就職がしやすく、不動産価格が今のように高騰する前だったため、マイホームを購入するチャンスもあった。MZ世代にとってヤングフォーティーは、今の時代にはほとんど手にできないチャンスをつかみ、そのチャンスを生かして社会的・経済的基盤を固めた既得権世代なのだ。そんなヤングフォーティーが若者のトレンドを追う姿を見て、MZ世代はマウントを取られているように感じ、反感を持ってしまったという分析だ。

 ほとんどの40代・50代は、積極的なキャリア形成や徹底した自己管理によってプラスのイメージを積み上げている。ヤングフォーティーにも言い分はある。韓国が国際通貨基金(IMF)の救済を受けた1997年の通貨危機や、(リーマン・ショックに端を発した)世界金融危機を経験した。その過程で終身雇用の概念は消えた。終わりのない自己開発とアップデートが生き残りの条件となった。変化のスピードに追い付けなければ「老いぼれた人」という烙印(らくいん)を押されてしまう、そんな現実の中で生きている。MZ世代に向かって「年齢は罪なのか」と反論したくなるのも無理はない。しかし、見た目だけは若者感覚をアピールしているものの、中身は「老害オヤジ」そのものというヤングフォーティーが少なくないのが事実だ。

 ここで注目すべきなのは「ヤングフォーティー」を巡る議論が世代間対立を越えて社会全体に緊張と不安が生み出しているという点だ。MZ世代がヤングフォーティーをあざ笑うのは、単にその世代を攻撃しているのではなく、自分たちが苦しめられている現実的な制約と、チャンスの少なさに対する不満の表れという意味合いが強い。若者たちの不満はこれからますます高まるとしか考えられない状況だ。今年の第3四半期(7-9月期)まで、韓国の青年失業率(満15-29歳の経済活動人口のうち失業者の割合)は4期連続で悪化した。今年の年ベースの青年失業率は、コロナ禍以降で初めて上昇する見通しだ。住宅価格の急騰に加え、不動産規制も設けられ、若者たちの「住居のはしご(所得や資産の増加に伴って、賃貸から持ち家へと段階的に住環境を向上させていく過程)」は事実上先が閉ざされた。一方で中年層は、AIの波が押し寄せるという激変の中で、淘汰されまいと必死でもがいている。生存競争のプレッシャーの中、若者層の現実を理解しきれないケースもあるわけだ。

 世代間で互いにいがみ合う現象が見られるのは、社会が健全でないというシグナルだ。過去にも世代間の対立はあったが、残ったのは社会的な疲労と分裂だけだった。対立を緩和するためには世代間の理解と共感が不可欠だが、それだけでは十分とはいえない。各世代が直面している構造的・現実的な困難を軽減する必要があり、実質的な支援策が整備されなければならない。若者層には安定した雇用と住居が、中年層には持続可能な生活の基盤が必要だ。

 政界もまた、自分たちに有利な方向へと世代間の分断をあおるべきではない。今は全ての世代が手を取り合っても厳しい時期だ。社会全体の連帯がこれまで以上に強く求められている。

キム・スンボム記者

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