南北関係
原潜建造目指す北朝鮮「韓国の原潜は核ドミノもたらす」
韓国の原子力潜水艦建造計画について北朝鮮は18日「地域における核ドミノをもたらす」と批判する論評を出した。韓国の原潜建造に対する米国の承認について北朝鮮は「非核国に対する核拡散行為」「世界的核軍拡競争を招く危険性」などとも主張した。
【写真】建造中の「核動力戦略誘導弾潜水艦」を視察する金正恩総書記
北朝鮮は国際社会の懸念や反対を無視し5回の核実験を通じて核兵器を開発し、これを搭載した戦略ミサイル原子力潜水艦(SSBN)を建造中と主張してきたが、韓国が進める核兵器を搭載しない動力のみ原子力の原潜(SSN)建造計画を「核拡散」と批判したのだ。今回北朝鮮が出した論評について韓国大統領室は同日「南北の緊張緩和と信頼回復に向け一貫して努力していきたい」とのみコメントした。
■北朝鮮「韓国の原潜は核の野望実現に向けた動き」
韓国と米国は先日の首脳会談後の共同声明文「ジョイント・ファクトシート」、また韓米国防長官による「安保協議会議(SCM)共同声明」を相次いで発表したが、北朝鮮は朝鮮中央通信の論評でこれらを批判した。韓米両首脳はさらに「北朝鮮の完全非核化」を目指す方針も改めて確認したが、これについても北朝鮮は「われわれ(北朝鮮)の憲法を最後まで否定する対決方針の集中的表現」と評した。北朝鮮は2012年に改正した憲法の序文に自分たちを「核保有国」と明記し、今年9月には金正恩総書記自ら「非核化など絶対にあり得ない」と明言したが、それでも米国のトランプ政権は非核化を今も放棄していないため、改めてこれに反発したのだ。
韓国による原潜建造に対する米国の承認について北朝鮮は「全地球規模で核統制不能な状況をもたらす厳しい事態への発展」と主張した。韓国の原潜建造計画についても「核の野望実現の大門を開く最も危険な動き」「独自の核武装の道に進むための布石」などと批判した。
韓国が建造を目指すのは核兵器を搭載した戦略原潜ではなく、国際原子力機関(IAEA)の監督を受け核物質を「燃料」としてのみ使用する原潜だ。これに対して北朝鮮の金正恩総書記は2021年1月に核ミサイルの発射が可能な戦略原潜の建造を「5大戦略課業」と定め、今年3月には自ら戦略原潜を建造中の造船所を視察した。
ところが北朝鮮は米国が韓国の原発産業に必要なウラン濃縮、使用済み核燃料の再処理権限確保の手続きを支持したことについても「(韓国が)準核保有国として背伸びするための足場を築いた」と主張した。ある外交筋は「NPT(核拡散防止条約)脱退を一方的に宣言して核武装した北朝鮮がNPTを順守する韓国の平和的原子力利用を誹謗(ひぼう)中傷するのは理にかなわない」と指摘した。
北朝鮮は韓米首脳が台湾海峡の平和と安定を強調したことについても「地域の主権国家による領土の完全確保と核心的利益を否定し、国際的な紛争地域問題に露骨に干渉する野蛮な本音をさらけ出した」と批判した。これについて北朝鮮大学院大学の梁茂進(ヤン・ムジン)教授は「中国の立場を代弁した」との見方を示し、韓国統一研究院の洪珉(ホン・ミン)先任研究委員は「中国との協力強化を示唆した」と説明した。
■韓国政府は南北経済協力予算を拡大
韓国大統領室の姜由楨(カン・ユジョン)報道官は同日「韓国政府は朝鮮中央通信の論評とは異なり北朝鮮への敵対心や対決の考えはない」「韓国政府は今後も韓米同盟が韓半島と地域の平和と安定に寄与するよう努力していきたい」との考えを明確にした。
また韓国統一部(省に相当)は来年度の南北経済協力事業の無償支援予算を今年度の1026億ウォン(約109億円)から2倍以上多い2211億ウォン(約236億円)に増額した。金大中(キム・デジュン)・盧武鉉(ノ・ムヒョン)政権当時、韓国は軽水炉建設用の借款やそれ以外の借款などを提供したが、北朝鮮はこれらを一切返済していない。このような形で北朝鮮が持ち去った現金と利子を合計すると3兆ウォン(約3200億円)を上回るという。それでも韓国の現政権は経済協力の予算を増額したのだ。
韓国野党・国民の力の金基雄(キム・ギウン)議員事務所が南北経済協力基金の事業別予算を詳細に分析したところ、来年度の南北経済協力(無償)予算は今年度の115%、額にして1184億ウォン(約126億円)増えた。これらの予算は北朝鮮に返済義務がない支援の性格を持つ予算で、執行の内訳も公表されない。韓国統一部は経済協力の1789億ウォン(約190億円)、交流協力の民間委託40億ウォン(約4億3000万円)などの予算も今年度よりも増額した。国民の力は「2026年度予算案の100大問題事業」と題された資料を公表し「北朝鮮政権は李在明(イ・ジェミョン)政権を相手にしないが、それでも南北経済協力事業予算を編成するのは血税の浪費」と批判した。
キム・ミンソ記者、キム・ヒョンウォン記者