▲写真=UTOIMAGE

 フィリピン人になりすました上で地方小都市の市長になり、違法賭博やマネーロンダリング(資金洗浄)、人身売買などの犯罪に手を染めてきた中国人女スパイに終身刑が言い渡された。

 ロイター通信やサウスチャイナ・モーニング・ポスト(SCMP)などが19日に報道したところによると、フィリピン・マニラ地方裁判所は中国国籍のアリス・グオ(35)被告=中国名:郭華萍=に人身売買の罪で終身刑を言い渡したとのことだ。共に起訴された7人も同じ罪で終身刑を言い渡された。

【写真】バンバン市長当時のアリス・グオ被告

 グオ被告はフィリピン北部のルソン島にあるタルラック州バンバン市の市長を2022年から務めていた。だが、中国情報機関に関わっているとの疑惑が取り沙汰されて2024年に市長の職を解かれ、その後の捜査で中国系犯罪組織と結託して違法オンラインカジノや詐欺拠点を運営していたことが明らかになった。人身売買もこの捜査過程で浮上した。

 問題になった施設は事務棟・高級ヴィラ・大型プールまで備えた大規模複合施設だったが、実際には違法賭博と「ロマンス詐欺」など各種特殊詐欺が行われている組織のアジトだった。 施設の場所も市長室の裏手すぐの所にあったことが分かった。

 同施設の実体は昨年3月、あるベトナム人が監禁状態から脱出し、警察に通報したことで明らかになった。フィリピン捜査当局は現場を捜索した際、不法に監禁されて犯罪に動員されていた約700人を救助した。被害者の出身地は中国・ベトナム・マレーシア・台湾・インドネシア・ルワンダなどさまざまで、彼らは「犯罪への加担を拒否すると拷問や暴行を受けた」と供述した。

 施設がある土地の半分はグオ被告の名義になっており、同被告が関連法人の代表で実質的経営者だったことが確認された。それでもグオ被告は「中国人の父親とフィリピン人の母親の間に生まれ、フィリピンの農場で育った」と主張していた。

 だが、フィリピンのリサ・ホンティベロス上院議員が国家捜査局(NBI)に依頼して指紋を照合した結果、グオ被告の指紋は2003年に中国パスポートでフィリピンに入国した「郭華萍」と一致した。これに対してフィリピン大統領府組織犯罪対策委員会(PAOCC)は同被告の市長職を解き、「アリス・グオ」名義のフィリピン・パスポートを抹消した。

 身元が明らかになった後も、グオ被告はしばらく逃亡を続けた。昨年7月に逮捕状が発行されると、同被告は行方をくらまして何度も船を乗り換えながらマレーシアに渡り、その後シンガポールとインドネシアに移動した。フィリピン当局は4カ国で追跡を続け、同年9月、インドネシア・ジャカルタで逮捕した。

 今回の事件は、フィリピンと中国が南シナ海の領有権をめぐって対立を続けている中で行われた。中国大使館は今回の事件に対する論評の要請に応じていない。

チョン・アイム記者

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