▲務安国際空港で起こった済州航空機事故の被害者遺族協議会は2日、ソウル市竜山区の韓国大統領室近くで事故原因の中間調査結果を公表する公聴会の延期を求める抗議活動を行った。/NEWSIS

 務安国際空港で発生した済州航空機事故の原因を調査する国土交通部(省に相当)航空鉄道事故調査委員会は2日、当初4-5日に予定されていた公聴会を突如延期すると発表した。委員会は公聴会で事故原因の中間調査結果を公表する予定だったが、2日前になって突如延期を発表したのだ。

 表向きの理由は遺族らの反発だったが、取材を進めると実は公聴会の開催そのものが真相解明を妨害する意図があることが分かった。まず委員会は公聴会の日程を発表する際の態度が明らかに不自然だった。国土交通部担当の記者らには「質問は制限する」とくぎを刺し、また会場が狭いとの理由でユーチューブで公開するとしていた。明らかに現場での取材を妨害する意図があるようだった。

 国民の関心が集まる事故調査結果を公表する場で、ここまであからさまに取材を妨害できる理由は「公聴会」という仕組みのためだ。「事故調査委員会公聴会運営指針」には「メディアなどの質問は受け付けない」と定められている。ちなみに委員会が公聴会で調査結果を公表した前例は2002年に金海空港で発生したエア・チャイナ航空機墜落事故の1回だけだ。

 公聴会は米国家運輸安全委員会(NTSB)の聴聞会と同じ形式を採用しているようだが、実はその性格は全く異なる。米国では中間調査報告を発表する前に専門家や証人らを呼んで訊問を行うが、その際に出席者らは事前に宣誓をしなければならない。これに対して韓国の公聴会は調査結果の発表と同時に行われ、その場で専門家の意見を聞く形となっている。委員会内部とその周辺では「専門家の言葉を借りて自分たちの意見に権威を持たせたいだけ」との指摘もある。しかもエンジンの製造メーカーなど航空機や部品関連メーカーの関係者は出席しないという。

 委員会のこのような態度は当然調査結果に対する不信へとつながる。調査の核心は国土交通部と韓国航空公社が設置と改造に関与した「コンクリート製構造物」だ。つまり国土交通部が設置した委員会は国土交通部に所属する自分たちの上司や同僚の不正を暴かねばならないことになる。

 また調査結果では務安空港での済州航空機事故に重大災害処罰法の適用が可能かどうかの判断結果も提示する可能性が高い。もし同法が適用されれば民事上、刑事上の責任の重さがあまりに違ってくる。適用されれば遺族への損害賠償額は最大で5倍にまで膨れ上がるため、179人が犠牲になった今回の事故に対する損害賠償額は数千億ウォン(数百億円)に達する可能性もある。しかもこれは経営陣など会社の幹部に対する同法による処罰も前提になっている。

 委員会は今年7月にも調査結果の一部をメディアを通じて公表しようとしたが、遺族の反対で取りやめた。当時委員会が発表予定だった要点は「右側エンジンの損傷がひどかったが、パイロットは右側ではなく左側エンジンを切った」だった。公表取り消し後「委員会はエンジンなどに欠陥があった可能性を排除し、パイロットの過失と断定している」などさまざまなうがった見方も広がった。そのため今回公聴会で調査結果を一方的に公表してしまうと、混乱はさらに膨れ上がる可能性もあった。

 委員会は公聴会を通じての調査結果公表はやるべきではない。それよりも犠牲者遺族や国民に全ての情報を公開し、調査の全ての過程を説明することを優先すべきだ。

キム・アサ記者

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