社説
新卒・既卒の6割が就職を諦める韓国の就職難、日本の氷河期世代より深刻【10月10日付社説】
韓国の大学4年生と既卒者の10人に6人が就職活動を事実上放棄、あるいは経験のため形だけの消極的な就活しかしていないことが調査で分かった。韓国経済人協議会が行ったアンケート調査によると、「就職活動をほぼしていない(21%)」「しているが形だけ(32%)」「何もせず休んでいる(7%)」が全体の60%に達したという。
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彼らは働くことが嫌ではない。同調査によると、積極的に就職活動を続ける彼らが願書を提出した回数は今年だけで平均13回以上に達しているが、うち第1次選考を通過した回数は2.6回だった。それだけ若者の就職難が深刻と言える。そのため彼らは自分が就職できる可能性は低いと考え、無気力に陥り就職活動自体を諦めているのだ。社会全体から見ても危険なシグナルだ。
若者の就職難の原因は複合的かつ構造的だ。企業は不確実な経営環境の中、かなり前から新卒採用を減らし、即戦力となる中途採用の割合を増やす傾向が顕著になっている。加えてAI(人工知能)に仕事が移行する状況も続いている。過去に新入社員が担当していた資料整理や文書作成、コーディングなど初歩的な業務は今やAIが行っている。企業としては新卒採用の必要性を一層感じなくなっているのだ。
若者が就職できない状況が将来何をもたらすかは日本の事例を見れば分かる。日本は1990年代初めにバブルが崩壊し、その後10年以上にわたり企業は正社員の新規採用を控え、いわゆる就職氷河期と言われる時代を迎えた。当時正社員採用がかなわなかった若者たちは「氷河期世代」と呼ばれているが、彼らは50代になった今も多くが経済的に自立が難しい状況に置かれている。そのため今日本では80代となった親の年金に頼って暮らす「8050問題」が深刻な社会現象となっている。個人の挫折が国の財政やセーフティーネットなどの社会基盤を揺るがし始めているのだが、実は今の韓国の状況はこの30年前の日本以上に深刻だ。
企業に採用を強制することはできず、またそれでこの問題が解決するわけでもない。企業は社員を採用することで利益が出るなら何も言わなくても採用する。つまり今こそ硬直した韓国の労働慣行を改革しなければならない。企業に対しては社員を解雇する時の負担を考えず、必要な時に採用できるようにしなければならない。これだけでも雇用が全体的に拡大し、解雇を規制する以上に働く側に有利になるだろう。
規制を果敢に撤廃し、新規の起業を促すことも必要だ。AIの時代に見合った職務に転換するためのリスキリングや実務に沿ったインターンも大幅に増やさねばならない。大学教育も産業構造の変化に合わせ全面的に見直さねばならない。若い世代が就職できない問題は遠くない未来に国にとって最大の懸案になるだろう。