事件・事故
旧統一教会から政界への働きかけの見返りに集団入党、両者の思惑が一致した「政教癒着」の実態
世界平和統一家庭連合(旧統一教会)の政界癒着疑惑に関連し、韓国警察庁国家捜査本部の特別捜査チームは17日、ソウル拘置所で韓鶴子(ハン・ハクチャ)旧統一教会総裁を取り調べた。国家捜査本部は旧統一教会が2018年から20年にかけ、田載秀(チョン·ジェス)国会議員(前海洋水産部長官、共に民主党)、林鍾声(イム・ジョンソン)元国会議員(共に民主党)、金奎煥(キム・ギュファン)元国会議員(未来統合党)らに現金やブランド物の時計などを渡したとされる疑惑について、韓総裁を3時間にわたり追及した。国家捜査本部はまた、韓総裁の「金庫番」とされるA氏にも参考人として出頭を求め、事情を聴いた。
【グラフィック】旧統一教会の主な行事と関与した政治家
警察は15日、旧統一教会のソウル本部と京畿道加平郡にある「天正宮」などを家宅捜索し、林鍾声元議員と金奎煥元議員ら2019年当時の国会議員10人の名前が書かれた支援者リストを押収したという。警察は旧統一教会の聖殿である天正宮の建設・補修に関連する働きかけがあったこともつかんだもようだ。旧統一教会側が田載秀議員の本500冊を購入し、間接的に支援した疑惑も浮上した。これについて、田議員は「出版社経由で正常に購入したものだ」と説明した。
警察は旧統一教会が与野党の政治家と接触して金品を渡し、働きかけを行った背景の解明を進めるとみられる。旧統一教会が主催する主な行事に多くの政治家が参加していたことが明らかになったためだ。
旧統一教会が毎年開く「ピースロード統一大長征」が代表的だ。この行事はは160カ国余りで徒歩、自転車、自動車などで特定地域を横断するものだ。今年8月、全羅北道全州で開かれた「ピースロード2025全羅北道統一大長征」には、民主党の地元選出の現職国会議員である鄭東泳(チョン・ドンヨン)統一部長官と金寛永(キム・グァンヨン)全羅北道知事が書面で祝辞を送った。
昨年大邱市で開かれたピースロード行事には国民の力の朱豪英(チュ・ホヨン)、秋慶鎬(チュ・ギョンホ)、姜大植(カン・デシク)の各国会議員が祝電を送った。2023年に江原道高城郡で開かれたピースロード行事には林鍾声(イム・ジョンソン)元議員、昨年の総選挙で国民の力の候補として出馬した金炯錫(キム・ヒョンソク)元統一部次官が祝辞を述べた。
旧統一教会傘下団体の行事にも政治家が出席したり祝辞を述べたりしていたことが分かった。旧統一教会系の「天主平和連合(UPF)」による「2020ワールドサミット」には国連事務総長を務めた国家気候環境会議の潘基文(パン・ギムン)委員長、国民の力の李柱栄(イ・ジュヨン)元国会副議長、文在寅(ムン・ジェイン)政権で文化体育観光部長官を務めた朴良雨(パク・ヤンウ)氏が出席した。民主党の千正培(チョン・ジョンベ)元法務部長官、国民の力の洪文杓(ホン・ムンピョ)元国会議員は、書面で祝辞を送った。UPFの別の行事である「新韓国フォーラム」には2021年に金鍾仁(キム・ジョンイン)元国民の力非常対策委員長、文在寅政権で文化体育観光部長官を務めた民主党の黄熙(ファン・ヒ)議員が講演した。
旧統一教会は主催行事に有力政治家を招待する形で勢力拡大や懸案解決に向けた土台づくりを図ったとみられている。旧統一教会の全方位的な政界接触は、初代教祖だった故文鮮明(ムン・ソンミョン)総裁が2012年9月に死去した後の難局打開策だった可能性もある。韓総裁は夫だった文総裁の死後、その座を継承したが、三男文顕進(ムン・ヒョンジン)氏、七男文亨進(ムン・ヒョンジン)氏と法廷紛争などを経験した。今年日本では高額献金などを問題視し、日本政府が旧統一教会に対し行った解散命令請求を一審の東京地裁が認め、危機に追い込まれた。こうした状況で韓日海底トンネル、対北朝鮮関連事業など教団にとって悲願の事業を解決するために政界との接触を強化したとの見方だ。
一票でも欲しい政治家は、30万人の信者を擁する旧統一教会の行事への参加要請を拒むことはできなかったとみられる。ある現役国会議員は「違法でなければ、スパイの助けを受けてでも票を得たいというのが政治家だ」と話した。
カギは旧統一教会が政治家と接触する過程で金品による働きかけなどの違法行為を行ったかどうかだ。旧統一教会関係者は「異端という偏見を打破するため、UPFのような非政府組織(NGO)で平和運動を広げ、政治家もそれに連帯しただけだ」と話した。
こうした中、警察に先立ち旧統一教会関連疑惑を捜査した閔中基(ミン・ジュンギ)特別検察官(特検)は、旧統一教会から違法な政治資金1億ウォン(約1055万円)を受け取った疑いで起訴した国民の力の権性東(クォン・ソンドン)国会議員に懲役4年を求刑した。
イ・ミンギョン記者、イ・ギウ記者、ユン・ヒゴン記者