▲イラスト=UTOIMAGE

 1989年の天安門事件当時、武力鎮圧命令を拒否して実刑を受けた中国人民解放軍の徐勤先・元第38集団軍司令官の裁判映像が最近ユーチューブに突然流出した。

【写真】徐勤先・元司令官の裁判映像

 ニューヨークタイムズは17日、徐元司令官が1990年に非公開で行われた軍事法廷で鎮圧命令を拒否した理由を直接陳述する場面を含む約6時間分の映像が公開されたと報じた。中国ではユーチューブへの接続が規制されているが、映像は海外で急速に拡散し、再生回数100万回をはるかに超えた。

 映像で徐元司令官は裁判官の追及に対し、「個人的に(武力鎮圧に)参加したくなかった」と述べた。「参加したくなければそれでいいのか」という質問にも「そうだ」と答えた。徐元司令官はまた、同僚に対し、「こういう任務をうまく実行すれば英雄になり得るし、歴史の罪人にもなり得る」とも証言した。

 徐元司令官は当時、約1万5000人の武装兵力を北京のデモ現場に投入するよう命じられた。しかし、政治的問題は政治的手段で解決すべきで、軍事力の使用には同意できないという信念を法廷で表明した。徐元司令官による命令拒否後、第38集団軍は別の指揮官の統率で北京市内に進入し、鎮圧に加わった。徐元司令官は懲役5年を言い渡され、2021年に85歳で死亡した。

 映像が公開されたタイミングは、中国国内で軍部を狙った大規模な腐敗撲滅作業が進んでいるほか、台湾、日本、米国を巡る軍事的緊張が高まっている時期とも重なり、何かを示唆しているのではないかという見方もある。中国最大の政治的タブーである天安門事件を軍内部の記録という形で明らかにし、中国の政治体制の現実を国際社会に訴えているとの受け止めもある。映像を公開した台湾在住の歴史学者、呉仁華氏はニューヨークタイムズとのインタビューに対し、「この30年間収集した天安門関連資料の中で最も重要な記録だ」と述べた。

ソ・ボボム記者

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