政治総合
サムスン電子の竜仁半導体メガクラスター計画巡り与党・共に民主党「全羅北道への移転で内乱終息」
韓国半導体業界の両雄であるサムスン電子とSKハイニックスが1000兆ウォン(約108兆円)という巨額の資金を投じて京畿道に整備する「竜仁半導体メガクラスター」が地方選挙を控えた政界からの「湖南(全羅道)移転要求」に巻き込まれている。竜仁半導体メガクラスターは用地買収が終了し、土地補償が進んでおり、一部で工事が始まった段階だ。それでも「半導体産業団地移転が尹錫悦(ユン・ソンニョル)による内乱を終わらせる道だ」というとんでもない論理まで登場し、国家産業競争力を向上させるための「百年の大計」を揺るがしているのだ。
【グラフィック】サムスンの竜仁への投資状況
共に民主党の安浩永(アン・ホヨン)国会議員(全羅北道完州・鎮安・茂朱選出)は4日、ソーシャルメディアに「尹錫悦の内乱を終わらせる道は竜仁半導体(メガクラスターの)サムスン電子の全羅北道移転だ」と主張した。安議員は「尹錫悦の内乱は全羅北道の未来を破壊した暴挙だった」とし、「首都圏利己主義に対抗して戦い、サムスン電子移転を必ず成し遂げる」と意気込んだ。国会で気候エネルギー環境労働委委員長を務める安議員は6月の統一地方選で全羅北道知事選への出馬を宣言した状態だ。
安議員だけでなく、全羅道では市民団体を中心に「半導体クラスターセマングム誘致推進委員会」が結成され、署名運動にも開始した。セマングムは全羅北道の沿岸部にある広大な干潟だ。昨年12月には全羅北道の地元議員らと送電塔反対対策委員会の住民数百人が国会前で竜仁半導体国家産業団地の全面見直しを要求した。
■大統領と閣僚も加勢
政府は議論のバランスを取るどころか「全羅道移転論」をむしろあおっている。李在明(イ・ジェミョン)大統領は昨年12月10日、「K半導体ビジョンと育成戦略報告会」で「再生可能エネルギーが豊富な南部地方に目を向け、新しい産業生態系を構築することに関心を持ってほしい」と発言した。約2週間後の12月26日には金星煥(キム・ソンファン)気候エネルギー環境部長官が「竜仁でSK、サムスン電子が使う電力量は原発15基分だが、必ずそこでなければならないか、今からでも電気が豊富な地域に移すべきか考えている」と述べ、波紋を広げた。竜仁クラスターは確かに大量の電力確保がカギとなるが、そのカギを握る大統領と閣僚が電力問題の解決策を模索するのではなく、それを口実に半導体戦争の最前線に立つ企業の足を引っ張っている。こうしたムードの中で、全羅北道などの地元政界が加勢しているのだ。
竜仁半導体メガクラスターは500人以上に対する土地補償が進んでおり、一部現場ではすでに工事が始まっている状態だ。半導体産業団地は計画から完成まで少なくとも8年かかる長期事業だ。中国が今や半導体まで韓国を追い越そうとしている危機的な状況で、現状を覆して建設地を再選定するというのは、韓国が自らグローバル競争から離脱すると宣言するにほかならないとの指摘が出ている。
しかも、半導体クラスターの全羅道移転論やセマングム代替論を支えるインフラは事実上皆無だ。半導体工場は電気と水が生命線だ。セマングム開発庁によると、同地区の現在の発電能力は太陽光で0.3ギガワットだ。サムスンとSKが竜仁で必要とする15ギガワットの50分の1にすぎない。先月、セマングム開発庁の金宜謙(キム・ウィギョム)庁長は昨年12月、2030年までに発電能力を5ギガワットに高めると言ったが、李在明大統領でさえ「物理的に可能なのか」と問い返したほどだ。半導体業界関係者は「電力規模も問題だが、0.01秒の停電も許されない半導体工程の特性上、天候に左右される太陽光や風力に依存するのはリスクがあまりにも大きい」と話した。
■半導体業界の懸案に絡む政治的論理
水の問題も同じだ。サムスン電子の竜仁半導体工場の操業には1日76万トンの水が必要だ。漢江水系の八堂ダムが近い竜仁は、1日数十万トンの工業用水を確保することが可能だ。一方、移転候補地として取り上げられているセマングム地域などの場合、現地ダムの余裕貯水量は2万トン余りにすぎない。
半導体の超格差を維持する上で重要なのは修士・博士級の高級人材だ。韓国半導体産業協会による調査の結果、関連専攻者の73.2%が首都圏勤務を希望した。工場は移転できるかもしれないが、人の心を強制的に移すことはできない。無理に地方に移転するならば、高級人材にそっぽを向かれるのが現実だ。数百社の下請け企業とASML、ラムリサーチなど世界的な設備メーカーも既に首都圏を中心に形成された半導体生態系も政府の一言では移転させられない。半導体業界は全羅道が人材、用水、生態系などのインフラを整えるのに少なくとも10年前後かかるとみている。
半導体の権威である黄哲盛(ファン・チョルソン)ソウル大碩座教授は「地域の均衡発展という論理も現実を直視する必要がある」とし、「まだ埋め立てさえ完了していない(セマングムのような)地域に電力、用水、交通、定住条件をすべて備えた半導体クラスターを整備するということは、スピードが命である世界の半導体市場から自ら退場を選択するに等しい」と話した。
サムスンを含む大企業は非首都圏に継続的な投資を約束したが、現政権は労働時間週52時間上限制の例外といった半導体業界の悲願に「地方投資」という条件をひも付けるなど負担を課している。財界関係者は「国家の存亡に関わる戦略産業をレゴブロックを移すように票田に移せると考えること自体がナンセンスだ」とし、「半導体を地方区のための戦利品のように考える行動が目に余る」と嘆いた。
朴淳燦(パク・スンチャン)記者