▲グラフィック=キム・ソンギュ

 ロシアが先日、ウクライナに対し複数回にわたり北朝鮮軍捕虜の送還を要求したことが分かった。ウクライナを訪問した韓国野党・国民の力の庾竜源(ユ・ヨンウォン)議員が会見で明らかにした。ウクライナの捕虜収容所には戦闘中に捕虜となった20代の北朝鮮軍兵士2人が収容されているが、いずれも韓国への帰順を求めている。この事実をロシアは当然把握しているため、北朝鮮がロシアを通じて兵士らの送還を求めたとみられる。

【写真】韓国行きを希望している北朝鮮捕虜2人

 2人が北朝鮮に送還されればいかなる運命をたどるか誰もが容易に想像できるだろう。しばらくは政治的に利用されるが、その後ほどなくして姿を消すだろう。いわば文字通り「三代滅族」となるのだ。北朝鮮は軍に対して「捕虜になるな」と指示しているため、兵士たちの多くは戦場で自爆する。この2人の捕虜もメディアのインタビューで「韓国に行けなければ私は間違いなく死ぬ」と語った。単なる意見や予測ではなく「生きたい」という心の叫びだ。

 ウクライナ政府は当然韓国との関係を考慮しているが、それに加えて人道的観点からも北朝鮮軍捕虜をロシアに送還していない。しかしこの対応が今後も続くとは限らない。ウクライナもロシアに捕らえられたウクライナ軍兵士を取り戻さねばならないからだ。

 韓国の前政権は北朝鮮軍捕虜問題の解決に積極的に取り組んできたが、現政権発足後はそのような動きは見られず、「北朝鮮軍捕虜問題についてはウクライナと協議を続けている」という決まり文句を繰り返すだけだ。ウクライナと何を協議し、その結果どうなったか、今韓国政府は一切明らかにしていない。つまり北朝鮮軍捕虜は事実上、放置されているのだ。北朝鮮との関係改善に悪影響を及ぼすとの計算から、現政権がこの捕虜問題から顔を背けているのは間違いない。

 送還すれば報復を受ける可能性が高い場合、捕虜などをその国に引き渡さないことは国際法の基本原則の一つだ。もし南北関係を口実に韓国政府が北朝鮮捕虜の送還を傍観すれば、これは国際的な規範に完全に反するばかりか、国際法うんぬん以前に人としての道理に反するだろう。

 ウクライナは北朝鮮軍捕虜問題の対応を先送りすると韓国政府は見込んでいるようだ。しかしロシアによる最近の理不尽な動きを考えると、ロシアが今後破格の条件を提示して北朝鮮軍捕虜を取り戻しに来るとウクライナが想定しているのは間違いなく、またそうなっても韓国政府は抗議しないと踏んでいるのかもしれない。韓国政府はたとえ南北関係を重視する立場であっても、それでもこの2人の生命は何としても救出しなければならない。韓国政府には譲れない一線があり、それが正に人道主義であるという事実を金正恩(キム・ジョンウン)総書記にも知らせるべきだ。

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