「悪戦苦闘」。今のソン・フンミン(30)=トッテナム=にこれほどピッタリの表現はないだろう。韓国代表チームの主将を務めるソン・フンミンは今月初めの試合中に左目の周りを負傷した。骨折した顔の骨4カ所をつないで2022国際サッカー連盟(FIFA)ワールドカップ(W杯)決戦の地であるカタールのドーハにやって来た。手術から二十日後の先月24日、ウルグアイとのW杯グループリーグH組第1戦に臨んだ。
黒いフ..
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「悪戦苦闘」。今のソン・フンミン(30)=トッテナム=にこれほどピッタリの表現はないだろう。韓国代表チームの主将を務めるソン・フンミンは今月初めの試合中に左目の周りを負傷した。骨折した顔の骨4カ所をつないで2022国際サッカー連盟(FIFA)ワールドカップ(W杯)決戦の地であるカタールのドーハにやって来た。手術から二十日後の先月24日、ウルグアイとのW杯グループリーグH組第1戦に臨んだ。
黒いフェイスガードを着用しているが、不便なことが一つや二つではない。まず視野が狭くなり、周囲の状況を判断するのが難しい。流れる汗もプレーの邪魔になる。マスクがずれるたびに手で元の位置に固定しなければならないので、集中力も途切れる。クロスやシュートをするタイミングが普段より少しずつ遅れる様子もあった。第1戦では、主将が腕に付けるキャプテンマークが緩み、どんどん下がって苦労した。キャプテンマークを手に持ってプレーした時もあった。FIFAは複数のチームから不満の声が上がるや、「欠陥キャプテンマーク」を変えた。
ガーナとの第2戦でソン・フンミンは韓国がリードされていた後半、相手側ペナルティボックス内で宙に浮いたボールを取ろうとヘディングまで試みた。手術した所に衝撃を与える危険があるのにもかかわらず、身を惜しまなかった。だが、韓国が結局2-3で負けると、ソン・フンミンのソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)アカウントには「今日やった(活躍した)ことは何もない」「けがしているなら休めよ。何で出てくるんだ」「韓国代表チームでは(活躍)できないのが事実だ」「終わって泣いただけだ」といった非難のコメントが寄せられた。
ガーナ戦の後、ソン・フンミンがパウロ・ベント韓国代表監督の手を払いのけているかのような短い動画がネット上に広まり、物議を醸すという出来事もあった。実はこの時、敗戦を悔しがるソン・フンミンにガーナ代表チームのスタッフ数人が近寄って話しかけたのだが、そのうち1人がソン・フンミンの肩に手をかけ、スマートフォンで記念写真を取ろうとした。神経過敏になっていたソン・フンミンは誰かが再び自分の肩に触れると、「放っておけ」という様子で体をかわした。しかし、その人物がベント監督であることにすぐに気付くや表情を和らげ、いたわりの言葉をかけるベント監督と一緒に歩いていった。
ソン・フンミンは共同取材区域で、韓国代表の先輩であり、KBS解説者として現地に来ていた具滋哲(ク・ジャチョル、33)=済州ユナイテッド=と会い、ハグした。彼が初出場した2014年W杯ブラジル大会の時の韓国代表キャプテンが具滋哲だった。2人は2018年ロシア大会でも一緒にプレーした。ドイツとのグループリーグ第3戦では負傷で欠場した奇誠庸(キ・ソンヨン)に代わってソン・フンミンがキャプテンマークをつけてプレーし、2-0の勝利という奇跡を起こした。先の2回のW杯で何度も涙を流したソン・フンミンは、今回のW杯で感情を抑えているように見えたが、「先輩キャプテン」の前ではしばし「末っ子」だったころに戻った。
ソン・フンミンは韓国の報道陣とのインタビューで、「選手たちは頑張ったが、こうした結果にしかならなかったことは申し訳ない。応援してくれたファンにも申し訳ない。私自身もきちんとやって、選手たちをうまくリードしなければならなかったが、それができず胸が痛む」と語った。そして、「みんなこれまで本当によくやってくれた。今までのようにやってくれれば、主将としてとてもありがたい。グループリーグ最後の試合が残っている。(決勝トーナメント進出の)可能性を見据えて、きちんと備える」と覚悟の言葉を口にした。
けがと闘い、ピッチでの司令官役まで務めている主将に非難の声が寄せられると、それを上回る数のファンがソン・フンミンのインスタグラムに投稿した。「ヘディングするのを見て涙が出た」「闘魂に拍手を送る」「出場してくれるだけでもありがたい」「あなたは大韓民国の英雄だ」などの励ましや応援、感謝の言葉であふれていた。「ソン・フンミンいのないサッカー韓国代表のカタールW杯は想像できない」と支持する声だった。
ドーハ=成鎮赫(ソン・ジンヒョク)記者
朝鮮日報/朝鮮日報日本語版
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