▲韓国空軍が2022年3月25日、ある基地でF35Aステルス戦闘機28機を滑走路に並べて移動させる、いわゆる「エレファント・ウォーク」訓練を行っている様子。/写真=国防部提供
米国の戦略国際問題研究所(CSIS)が最近発表した、中国の台湾侵攻ウォーゲーム(戦争シミュレーション)は、韓国にとっても幾つか深刻な示唆点を投げかけた。台湾と韓国は同じではないが、中国の脅威、狭い国土、地理的な位置(韓国も島だ)など似ている点も少なくない。ウォーゲームの結果、ほとんど全てのケースで中国海軍が壊滅し、台湾占領は失敗した。しかし台湾はもちろん、米軍の被害も大きなものだった。
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▲韓国空軍が2022年3月25日、ある基地でF35Aステルス戦闘機28機を滑走路に並べて移動させる、いわゆる「エレファント・ウォーク」訓練を行っている様子。/写真=国防部提供
米国の戦略国際問題研究所(CSIS)が最近発表した、中国の台湾侵攻ウォーゲーム(戦争シミュレーション)は、韓国にとっても幾つか深刻な示唆点を投げかけた。台湾と韓国は同じではないが、中国の脅威、狭い国土、地理的な位置(韓国も島だ)など似ている点も少なくない。ウォーゲームの結果、ほとんど全てのケースで中国海軍が壊滅し、台湾占領は失敗した。しかし台湾はもちろん、米軍の被害も大きなものだった。
中国軍は台湾侵攻時、いつも真っ先にグアムと日本にある米空軍基地にミサイルの洗礼を浴びせた。至極当然の戦術だ。そしてこの最初のミサイル攻撃で、米空軍は平均200機前後の戦闘機を失った。空中戦で撃墜される機体はほとんどなく、90%は離陸もできずに地上で破壊された。雨のように降り注ぐ中国のミサイルの前で、パトリオットなど米国の迎撃ミサイルは多勢に無勢だった。
台湾空軍は、最初のミサイル攻撃で戦力のほぼ半分を失った。台湾空軍の基地防護は韓国よりも堅固だという。北朝鮮の奇襲南侵も、中国と全く同様に、韓国の空軍基地に対する大量のミサイル空襲で始まる。今のままなら、被害は台湾以上になるだろう。韓国空軍は最大の対北抑止力だ。その戦力の半分が最初のミサイル攻撃で消えるとしたら、衝撃的で恐ろしいことだ。北朝鮮は、そういう攻撃ができるミサイルを積み上げていっている。
ほとんど全てのケースで、太平洋の第7艦隊の空母2隻がいずれも撃沈された。太平洋戦争のときも、空母はしばしば撃沈された。しかし今の米空母は、当時と違って米国の軍事力、国力の象徴だ。北朝鮮が挑発を行ったら、まず米空母がやって来て、そしたら北朝鮮が静かになる。だが対艦ミサイルの画期的発展で、空母の時代は揺らいでいる。中国は、ぎっしりと浮かべた人工衛星を通して米空母の位置をリアルタイムで把握できるようになった。そこへ対艦弾道ミサイルや超音速巡航ミサイルを同時に、大量に集中させたら、空母機動部隊は耐えられないという結果が出た。護衛のイージス艦が東奔西走しても、降り注ぐミサイルを全て防ぐことはできなかった。最終的に空母が沈没し、搭載していた戦闘機も全て海に消えた。
北朝鮮も対艦ミサイル開発に熱を上げている。韓半島有事の際、中国は米空母の位置を北朝鮮に教えてやるだろう。昨年、米空母が釜山に停泊した状況で、北朝鮮はこの空母を狙っているかのようなミサイル発射試験を行った。かつてなかったことだ。米国の戦略研究所は、地域的な危機において米海軍が習慣的に空母機動部隊を送る圧迫戦術を、もうやめなければならないと提言した。韓国が米空母に依存してきた時代も終わるかもしれない。
ウォーゲームにおいて、米国が台湾軍に対しウクライナ式の武器支援を行うのは不可能だった。中国のミサイルが台湾を包囲したからだ。台湾は、米国が大きな被害を出しながら中国海軍・空軍を撃退するまで、独りで耐えなければならなかった。韓半島有事の際、中国が北朝鮮支援へ本格的に乗り出したら、島同然の韓国も似たような状況に直面する可能性がある。
ウォーゲームは、中国本土に対する米軍の攻撃の可能性は排除した。全てのケースでそうだった。中国の対空防衛網も強力だが、それよりも核保有国との戦争拡大を避けるためだった。北朝鮮も既に核を持っている。米国は、同じ論理で韓半島有事の際に北朝鮮との戦争拡大を避けようとするかもしれない。北朝鮮はまさに、こうした地位を獲得しようと戦力を増強している。
中国の台湾侵攻ウォーゲームで最も核心的な変数は日本だった。日本が米国と共に戦争へ全面的に介入したら、最も楽観的なシナリオが描かれた。しかし日本が自国内の米軍基地を中国との戦争に使わせなかったり、それらの基地が中国の空襲を受けているのに自衛隊が中立を保ったりしたら、米国はかなり苦戦した。韓半島有事の際、日本国内の米軍基地も同じ役割を遂行しなければならない。もし日本が自国の安全のため米軍の基地使用を妨げたら、深刻な状況になる。
ウォーゲームは、中国との紛争で米国が依存し得る同盟は日本しかない、という事実を明白に示した。韓国は、中国の報復はもちろん、米軍戦力の分散を狙った中・朝の対南挑発を恐れて米国を支援しないだろう-と見なした。米軍は、韓国国内の米戦闘機の半数を他の地域へ移して使用するのが最善とされた。
最近の米国と日本の関係は、歴史においてこのような同盟が他にあっただろうかと振り返ってしまうほどだ。中国との対決で日本が有する死活的地位を、米国政府が深く認識していることを意味する。先日、米国のマイケル・ギルディ海軍作戦部長は、日本の原潜保有を認める可能性までほのめかし始めた。日本は今後5年かけて防衛費を2倍に増やす。韓国のほぼ2倍になるのだ。これに米国は歓呼を送った。激流のような事態の展開の中で、韓国の安全保障は志向点を正確に定めなければならない。
米国の軍関連の分析は悲観的なときが多い。だがこのウォーゲームの中には、重要なファクトと観点が入っている。もはや古い安全保障戦略は通用しない。ミサイルの時代において、伝統的な軍隊の姿に安住してもいけない。ウォーゲームの報告書は150ページと短くないが、韓国軍の大隊長クラス以上に在籍する多数の将校が読んでくれればと思う。
楊相勲(ヤン・サンフン)主筆
朝鮮日報/朝鮮日報日本語版
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