9回表、二死、点数は3-2。日本が1点リードしている場面。マウンドには日本の大谷翔平。打席には米国のマイク・トラウト。ロサンゼルス・エンゼルスのチームメートである米大リーガー2人の対決。当代随一と言われる投手と打者がWBC優勝チームを決める最後の勝負を繰り広げた。
ボールカウントは2ストライク3ボール。ホームラン1本で同点になる状況で、大谷は6球目にスライダーを選んだ。時速87マイル(約140キ..
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9回表、二死、点数は3-2。日本が1点リードしている場面。マウンドには日本の大谷翔平。打席には米国のマイク・トラウト。ロサンゼルス・エンゼルスのチームメートである米大リーガー2人の対決。当代随一と言われる投手と打者がWBC優勝チームを決める最後の勝負を繰り広げた。
ボールカウントは2ストライク3ボール。ホームラン1本で同点になる状況で、大谷は6球目にスライダーを選んだ。時速87マイル(約140キロメートル)の球が打者の内角から入って外角へ流れ、トラウトが空振りをしてそのまま試合は幕を閉じた。大谷は帽子とグラブを投げ捨て、雄たけびを上げた。日本の選手たちは皆マウンドに駆け寄り、抱き合って歓喜した。日本が米国を3-2で下し、2006年、09年に続き14年ぶり、通算3度目のワールド・ベースボール・クラシック(WBC)優勝を果たした瞬間だった。
大会MVPは大谷だった。投手も打者もこなす「二刀流」の大谷は、今大会7試合に出場し、3番打者としては打率4割5分5厘(23打数10安打)、1本塁打、8打点、10四球を記録した。さらに、投手としては3試合で9回と3分の2イニングを投げ、2勝1セーブ(防御率1.86、11奪三振)を挙げた。
大谷は22日、米フロリダ州マイアミのローンデポ・パークで行われた米国との決勝戦を前に、ロッカールームでチームメートたちが組む円陣の真ん中に立ち、声出しを始めた。「あこがれるのをやめましょう」「ファーストにゴールドシュミットがいたり、センターにマイク・トラウトがいるし。外野にはムーキー・ベッツがいたりとか。野球やっていれば誰しもが聞いたことある選手がいると思うが、今日一日だけはあこがれてしまったら越えられないので。僕らは今日、越えるために、トップになるために来ました。今日一日だけは彼らへのあこがれは捨てて、勝つことだけを考えていきましょう」。代表選手30人全員が大リーガーで、決勝戦スターティングメンバーの2023年の年俸が2億ドル(約263億円)を上回る「野球の本家」に対して、恐れずに戦おうという精神武装だった。
先制したのは米国だった。トレイ・ターナー=フィラデルフィア・フィリーズ=が2回表、日本の先発投手・今永昇太=横浜DeNAベイスターズ=の直球を打ち返してレフトフェンス越えの本塁打にした。ターナーにとっては今大会第5号で、2006年のWBCでイ・スンヨプ=現・斗山ベアーズ監督=が立てた単一大会最多本塁打記録に並んだ。日本は2回裏、昨年の日本リーグ本塁打王(56本)・村上宗隆=東京ヤクルトスワローズ=のソロ本塁打で同点に追いついた。米国の投手は韓国SKワイバーンズでもプレーしたことのあるメリル・ケリー=現アリゾナ・ダイヤモンドバックス=。村上は前日、メキシコとの準決勝で4-5とリードされていた9回裏、2打点となる逆転サヨナラ二塁打を放ってスランプから脱し、決勝でも一発を決めてプライドを守った。日本は続く一死満塁で、内野ゴロによりもう1点追加して2-1と逆転、4回裏にはソロ本塁打で3-1と引き離した。日本は8回、米国にソロ本塁打を奪われ3-2と追い上げられたが、9回に抑え投手として登板した大谷が1イニングを無失点(1四球)に抑えて勝利を決めた。大谷はこの日、打者としては2回出塁(3打数1安打1四球)した後、試合中盤からブルペンに移動して登板に備えていた。打順が巡ってくると、再びバッターボックスへ向かって走ってきてヘルメットとバットを手にするという珍しい光景が見られた。
大谷は当初、準々決勝以降はマウンドに立つ予定ではなかったが、決勝戦でブルペン練習を志願した。この試合の最後の瞬間に真っ向勝負を繰り広げたトラウトは、大リーグ史上唯一の12年・総額4億2650万ドル(約560億円)という契約を結び、今年だけで年俸3712万ドル(約48億7500万円)というスーパースターであり、米国代表チームの主将だった。トラウトは「第1ラウンドは大谷の勝利」「大会を心から楽しんだ。我々は戻ってくるだろう」と言った。
大谷は高校時代から「マンダラート」と言われる人生設計シートを使って人生の目標を立て、着実に達成してきたことで有名だ。中核となる目標1個に対して8個の実践課題を設定し、一つ一つ段階的に達成していくという自己鍛錬法だ。2018年アメリカン・リーグ新人王、2021年アメリカン・リーグMVP(全会一致)に続き、今回のWBC優勝と同大会MVP獲得で、また人生の目標を達成したのだ。
成鎮赫(ソン・ジンヒョク)記者
朝鮮日報/朝鮮日報日本語版
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