▲グラフィック=イ・ジンヨン
17日午後、ソウル市松坡区のソウル峨山病院葬儀場に設けられたキム・セロンさん(24)の祭壇には、「あの時、あの子は空の星になった」「来世でまた会いましょう。そのころまでには余計な声をなくしておくから」といったメッセージが書かれた花輪が置かれていた。キム・セロンさんはこの前日の16日、ソウル市城東区にある多世代住宅(低層の庶民的な集合住宅)で死亡しているのが発見された。9歳で映画『冬の小鳥』(20..
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▲グラフィック=イ・ジンヨン
17日午後、ソウル市松坡区のソウル峨山病院葬儀場に設けられたキム・セロンさん(24)の祭壇には、「あの時、あの子は空の星になった」「来世でまた会いましょう。そのころまでには余計な声をなくしておくから」といったメッセージが書かれた花輪が置かれていた。キム・セロンさんはこの前日の16日、ソウル市城東区にある多世代住宅(低層の庶民的な集合住宅)で死亡しているのが発見された。9歳で映画『冬の小鳥』(2009年)に出演し、仏カンヌ国際映画祭で上映された最年少の韓国人俳優であり、映画『アジョシ』(2010年)では観客628万人を動員した才能ある俳優がこの世を去ってしまったことから、韓国社会のあちこちから追悼と自省の声が上がっている。
キム・セロンさんは2022年5月、ソウル市江南区で飲酒運転をして事故を起こし、翌年裁判所で罰金2000万ウォン(現在のレートで約210万円)を言い渡された。その後、芸能界への復帰を試みたが、世論は厳しかった。生活苦に陥り、カフェでアルバイトをする姿が伝えられると、インターネット上には「これまで稼いだお金が相当あるだろうに生活苦だなんて」などの誹謗(ひぼう)中傷コメントが一部の人々から寄せられた。しかし、キム・セロンさんは芸能活動で稼いだお金をすべて家族に渡し、元々住んでいたマンションも所属事務所を通じて借りていたものだった。
本紙記者は17日、キム・セロンさんが亡くなっているのが発見されたソウル市城東区にある多世帯住宅を訪れた。路地は車が1台入るのも難しいほど狭く、あちこちにタバコの吸い殻がたまっていた。キム・セロンさんが住んでいた築35年の建物の中には、生前使っていたものと思われるピンク色のスーツケースが見えただけで、他には何もなかった。古びた鉄の門は閉ざされていた。
動画配信サービス「NETFLIX(ネットフリックス)」シリーズ『ブラッドハウンド』(2023年)のヒロイン、チャ・ヒョンジュ役で再起を試みようとしたキム・セロンさんに対し、世論は「存在そのものが迷惑」「なぜ、もぞもぞと這い出てこようとしているの」などと冷たかった。スタッフは撮影を止め、キム・セロンさんは自ら降板した。その後、この作品がネットフリックス非英語圏国の週間視聴時間数1位になると、「『キム・セロン・リスク』を乗り越えた」と評された。
生前のキム・セロンさんは「インスタグラム」など交流サイト(SNS)での活動が活発だった。だが、キム・セロンさんが投稿するたびに、「SNS病の末期患者」「精神年齢が低すぎ」などの誹謗中傷コメントが寄せられた。17日に弔問した知人のチャ・ヒョンジュンさん(25)は「キム・セロンさんは一見、とがっているように見えるが、心の中はとても前向きだった。SNSに写真を1枚載せるだけでも誹謗中傷コメントが寄せられるのを見て、気に病みながらも表には出さなかった。それなのに、このように虚しく逝ってしまった」と語った。チャ・ヒョンジュンさんはキム・セロンさんと約1年前、あるカフェで一緒にアルバイトをして知り合ったという。
キム・セロンさんは昨年4月、舞台で女優復帰を試みたが、世論の非難により水の泡となった。昨年11月、低予算映画『ギターマン』の撮影を終え、名前も「キム・セロン」から「キム・アイム」に改名して復帰を打診した。知人たちは「改名した後も芸能活動やカフェのオープンなどさまざまな準備をしていて、精神的・心理的な治療も受け続けていた」と話す。 映画『ギターマン』は今年5月に公開されるが、これがキム・セロンさんの遺作となってしまった。
警察によると、遺書は見つかっていないとのことだ。心停止状態のキム・セロンさんを発見した人は、事件当日にキム・セロンさんと会うことを約束していた友人だった。警察は「外部から侵入があった形跡など、犯罪が疑われる点は確認されていない。単純変死(事件性がない死亡)として終結することになる」と語った。
米イェール大学医学部精神医学科のナ・ジョンホ助教授は17日、SNS「フェイスブック」の自身のアカウントに「失敗したり、落ちぶれたりした人を捨てて、何事もなかったかのように通り過ぎる韓国社会の姿は、まるで巨大な『イカゲーム』のようだ」と言った。ソウル大学心理学科の郭錦珠(クァク・クムジュ)名誉教授は「誹謗中傷コメントは単なるコメントではなく、『ナイフで1回ずつ人を刺す行為』だ。このような状況に置かれた有名人はとてつもない無気力と恐怖に陥ることになる」と語った。
キム・セロンさんのファンたちは同日、「キム・セロンさんは自らの過ちを認め、反省し、再び立ち上がるために努力したが、彼女が耐えなければならなかった非難と無視は人間的な限界を超えていた」という追悼声明文を発表した。歌手MIGYO(ミギョ)は「人が死ななければ誹謗中傷コメントを書く人の手は止まらない」と語った。
安重顕(アン・ジュンヒョン)記者、チョ・ミンヒ記者、アン・テミン記者
朝鮮日報/朝鮮日報日本語版
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