▲イラスト=李撤元 (イ・チョルウォン)
京畿道のある高校に通っているAさんは今年、いじめ加害者扱いされた。被害を訴えたBさんは、学校に「Aさんが私をハブって(仲間外れにして)いる」と訴えた。だが二人はもともと友人同士で、ちょっとしたけんかで仲が遠ざかっただけだった。学校暴力対策審議委員会(学暴委)でBさんが話した被害事実も、大体において主観的な気分に関する内容だった。「Aさんが私をじろじろ見ながら笑ってるのを見るのがつらい」というよう..
続き読む
▲イラスト=李撤元 (イ・チョルウォン)
京畿道のある高校に通っているAさんは今年、いじめ加害者扱いされた。被害を訴えたBさんは、学校に「Aさんが私をハブって(仲間外れにして)いる」と訴えた。だが二人はもともと友人同士で、ちょっとしたけんかで仲が遠ざかっただけだった。学校暴力対策審議委員会(学暴委)でBさんが話した被害事実も、大体において主観的な気分に関する内容だった。「Aさんが私をじろじろ見ながら笑ってるのを見るのがつらい」というようなものだ。そのため、学校内外では「“問題ない”で終結するだろう」という予想が多かった。だが加害者扱いされたAさんの両親は、通報があるやいなや、弁護士を選任した。万が一「いじめ」だとする処分が出て、わが子の大学入試計画が根こそぎ駄目になることを心配したからだ。2カ月ほど審議を準備するのに、弁護士費用500万ウォン(現在のレートで約52万円。以下同じ)を要した。最終的に、この事件は「いじめではない」と結論が出た。
新型コロナの時点では沈静化していたいじめの発生件数が再び跳ね上がる中、今年の高校3年生が受ける2026年度大学入試からは、大学側が「いじめ加害の事実」を入試において減点要因として義務的に反映しなければならない。23年に、当時の国家捜査本部長指名者の息子がいじめ加害で転校処分を受けたものの、大学修学能力試験(大学入学共通テストに相当)中心の定時選考でソウル大学に入学した事実が明らかになるや、処罰が強化されたのだ。だが学校現場からは、こうした厳罰主義対策の副作用は深刻だという指摘が出ている。Aさんのように、生徒間の単なるけんかにもかかわらず、大学入試で不利益を被るのではないかと心配して無条件に弁護士の選任から手を付けるというケースが頻発したからだ。「処罰の強化にもかかわらずいじめは減っていない。弁護士の腹を肥やしているだけ」という批判が上がっている。
昨年、大邱の高校生だったCさんも、親しい友人とけんかをした後、いじめ通報に遭った。友人が、互いに仲が良かったころに悪口混じりで交わしたオンラインメッセンジャーの内容から、Cさんが送った部分だけを抜粋して「いじめに遭った」と主張したのだ。「ハプニング」で終わるはずの出来事だが、Cさんの両親は弁護士を探した。両親は「学暴委で誤解が解けるだろうと信じて準備せず、軽微なものであっても処分が出たら、大学入試で問題になるのではと不安だった」と語った。
ソウルでいじめ専門弁護士として活動しているD氏は「一昨年の韓国政府による『いじめ加害大学入試反映義務化』対策発表の後、高校でのいじめに関する電話相談は2倍、受任は1.5倍に増えた」と語った。D氏は電話相談30分当たり4万ウォン(約4100円)を取っている。それでも1日10本以上かかって来る日も少なくないという。別のいじめ専門弁護士も「教育熱が強いソウル江南や木洞の学暴委はほとんど全て弁護士を入れて進めており、最近では江東・松坡方面でも弁護士を選任して対応するケースが増えている」と語った。いじめ事件1件あたりの弁護士受任量は、少なくとも300万ウォン(約31万円)、多いときは3000万から4000万ウォン(約310-410万円)かかるといわれている。
生徒の保護者らがまず弁護士の選任から行うのは、学暴委対策を自ら準備する上でどうすればいいか分からず、途方にくれてしまうからだ。どういう書類をどのように提出すべきなのか、正確に知るのは困難で、学暴委の結果が委員の傾向次第で千差万別だということも不安をあおっている。
ローファーム(大型弁護士事務所)の中には「大学入試に不利益」という点を前面に押し出して「不安マーケティング」を行う例も多い。インターネットのポータルサイトで「学暴専門弁護士」を検索すると、「いじめ対応をしなければ大学入試で支障が出る」「加害者はわが子、大学入試を守るためには」といった宣伝文が100件近くヒットする。保護者らの心配と不安を刺激して弁護士を選任するように仕向けているのだ。いじめ関連業務を担当しているある教育庁関係者は「このところ、いじめ事件の受任料が上がっているという声が聞かれる」とし「子どもの未来を心配する保護者の気持ちが(弁護士らによって)利用されているようで残念」と語った。
生徒たちが「いじめ」を利用するケースまで発生している。最近、市道教育庁のいじめ担当者の会合で、ある高校における事例が取り上げられて皆を驚かせた。その高校では、試験の2-3週間前にいじめ通報の受理が急増したが、本当にいじめに遭ったわけではなく、競争相手の同級生を心理的に苦しめるために複数の生徒が通報したのだという。
韓南大学警察学科のパク・ミラン教授は「一部の極端な事例を除き、ほとんどのいじめ事件は一方的な被害・加害の関係ではないケースが多いにもかかわらず、『厳罰主義』とし、訴訟を通した勝者選別システムを学校に導入するのは無責任な教育者の便宜的政策」だと指摘し「日本のように教師の権威を大幅に強化していきつつ、生徒たちのささいな争いは教育的に処理する方向へと進むべき」と語った。
オ・ジュビ記者
朝鮮日報/朝鮮日報日本語版
Copyright (c) Chosunonline.com