▲昨年12月29日、全羅南道務安郡の務安空港で、チェジュ航空の旅客機が胴体着陸を試た時の様子。当時、ランディングギア(降着装置)なしで滑走路の地面と接触し、機体の下から火花が散った。写真提供=読者
昨年12月末、全羅南道務安郡の務安空港で179人の死者を出したチェジュ航空2216便事故について、パイロットが当時、ランディングギア(降着装置)や補助翼(フラップ)などを作動させようとした形跡がないことが確認された。鳥の群れと衝突して損傷を受けた右エンジンも止まったのではなく、相当なレベルの出力があったという。
【写真】最後の瞬間まで飛行機を止めるために奮闘していた機長
これまで「鳥の群れと衝突し..
続き読む
▲昨年12月29日、全羅南道務安郡の務安空港で、チェジュ航空の旅客機が胴体着陸を試た時の様子。当時、ランディングギア(降着装置)なしで滑走路の地面と接触し、機体の下から火花が散った。写真提供=読者
昨年12月末、全羅南道務安郡の務安空港で179人の死者を出したチェジュ航空2216便事故について、パイロットが当時、ランディングギア(降着装置)や補助翼(フラップ)などを作動させようとした形跡がないことが確認された。鳥の群れと衝突して損傷を受けた右エンジンも止まったのではなく、相当なレベルの出力があったという。
【写真】最後の瞬間まで飛行機を止めるために奮闘していた機長
これまで「鳥の群れと衝突してエンジン2基が故障し、そのためにランディングギア・システムが故障して胴体着陸を試みた」という分析が主だったが、実際にはパイロットが鳥の群れと衝突した後、ランディングギアを利用した着陸を試みることなしに、直ちに胴体着陸の準備に入ったということだ。
21日までの本紙の取材を総合すると、韓国国土交通部(省に相当)の航空鉄道事故調査委員会は、事故が起きた航空機の残骸の調査過程で、操縦席の前方にあるランディングギアのレバーが「OFF(オフ)」の位置にあったことを確認したという。パイロットがランディングギアを下ろそうとしたなら、ハンドルが「OFF」から「DOWN(下ろす)」に移動していなければならないが、そのままだったということだ。このレバーとは別に、操縦席の椅子のすぐ後方に手動でランディングギアを下ろすことができる別途の装置があったが、これもやはり動かした形跡がなかった。最終調査結果ではなく中間調査結果だが、ランディングギアを下ろそうという試みが全く行われていなかったということだ。
ランディングギアだけでなく、着陸時に使用する「補助翼」と速度を落とす「スピードブレーキ」のレバーもやはり作動させた形跡がないことが分かった。航空機はもともと着陸前にランディングギアと補助翼を下ろし、着陸後すぐにスピードブレーキが作動するようにあらかじめ設定しておく。ところが、このような操作を全くしなかったということだ。
可能性は大きく分けて二つある。まず、当時の状況があまりにも緊迫していて、このような操作をする余裕そのものがなかった可能性だ。油圧システムに損傷が出ている状況なので、操縦かんを動かすこと自体が容易ではなかった可能性があるということだ。もう一つは、わざとしなかった可能性だ。ある航空業界関係者は「ランディングギアや補助翼などを広げると、空気抵抗が増えて速度が落ちるが、エンジンが損傷を受けた状態で速度が落ち、滑走路まで行けないことをパイロットが懸念し、わざと胴体着陸を試みた可能性がある」と話す。
パイロットらは鳥の群れと衝突した直後、「(損傷が激しい)右エンジン(2番エンジン)を切ろう」と言った。同機の運航マニュアルでは、エンジンがひどく損傷した場合、エンジンを切るようになっている。しかし、ブラックボックスやエンジンを分析した結果、実際に電源を切ったのは右ではなく左エンジン(1番エンジン)だった。このため、左エンジンの出力はもちろん、左エンジンから出る電気と油圧システムがすべて不通になった。
ところが損傷がひどいために当初切ろうとしていた右エンジンは一部作動していたという。事故機が滑走路に胴体着陸を試みた時、低圧タービンがかなりの速度で回転していたということだ。事故機はエンジン故障後、空港から4-5キロメートル離れたところまで飛行したとされているが、右エンジンが一部作動してこうした飛行が可能だったということだ。ボーイング737-800機種はエンジンが1基正常に作動している場合、事故を起こすことなく飛行・着陸することができる。
「パイロットのミス」が事故原因の一つに挙げられたということで、チェジュ航空が非常時の場合のパイロット訓練を十分に実施していたのかや、パイロットの疲労度が適切に管理されていたのかなどを事故調査委員会が今後、重点的に点検するとの見方が出ている。
一方、遺族らは「パイロットのミスの可能性がある」という事故調査委員会の調査結果内容について、「務安空港滑走路の端にあったコンクリート製の土台や鳥類警報の適切性など多くの問題があるが、パイロットの過失だけを浮き彫りにしている」として強く反発している。遺族側は本紙に「コンクリート製の土台がなかったら、事故機が衝突して爆発する状況にまでは至らなかっただろう」と語った。
韓国の他のパイロットたちも強く反発している様子だ。民間航空機パイロット代表団体の韓国民間航空操縦士協会(ALPA-K)は21日、事故調査委員会の調査内容について、「パイロットに責任を転嫁しようとする試みだ」と批判する声明を発表した。同協会は「事故調査委員会は事故の複合性やシステム全体の失敗という本質を無視している」「パイロットをいけにえにしようという方向性に基づいた、歪曲(わいきょく)された結論だ」と主張した。
郭来乾(クァク・レゴン)記者
朝鮮日報/朝鮮日報日本語版
Copyright (c) Chosunonline.com