▲仁川市の江華平和展望台から見た北朝鮮・黄海道開豊郡ののどかな風景/聯合ニュース
韓国の情報機関である国家情報院が独自の設備で行っていた北朝鮮向けのラジオ放送やテレビ放送を先日中断したことが分かった。ラジオ放送は北朝鮮全域、テレビは新義州から元山周辺にまで電波が届くという。米軍が行ってきた放送を1970年代に受け継ぎこの放送は、金大中(キム・デジュン)・盧武鉉(ノ・ムヒョン)・文在寅(ムン・ジェイン)政権の時も中断されたことはなく、多少の変化があったのは放送時間の短縮や内容の..
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▲仁川市の江華平和展望台から見た北朝鮮・黄海道開豊郡ののどかな風景/聯合ニュース
韓国の情報機関である国家情報院が独自の設備で行っていた北朝鮮向けのラジオ放送やテレビ放送を先日中断したことが分かった。ラジオ放送は北朝鮮全域、テレビは新義州から元山周辺にまで電波が届くという。米軍が行ってきた放送を1970年代に受け継ぎこの放送は、金大中(キム・デジュン)・盧武鉉(ノ・ムヒョン)・文在寅(ムン・ジェイン)政権の時も中断されたことはなく、多少の変化があったのは放送時間の短縮や内容の見直し程度だった。ところが李在明(イ・ジェミョン)政権は発足と同時に北朝鮮向けの拡声器放送を中止させ、北朝鮮へのビラ散布を取り締まり、さらに国家情報院の対北朝鮮放送までストップさせた。
【表】李在明政権の対北融和政策
脱北民の多くは皆これら放送の思い出を持っている。放送を通じて発展した大韓民国や自由世界について関心を持ち、「人権」や「自由」などの言葉とその意味を知るようになった。時には収容所に入れられるリスクを甘受してでも放送を聞くこともあったという。北朝鮮住民にとって外部の情報や真実はそれだけ切実なものだが、拡声器放送やビラがなくなった今、北朝鮮住民が外部の情報を得られる唯一の方法は国家情報院によるこの対北放送しかない。そのため国家情報院が放送を中断すれば、北朝鮮住民は外の情報を聞き真実を知る手立てがなくなってしまう。
ある脱北民は北朝鮮で布団をかぶりながら放送を聞き、脱出に成功した後は放送を行った担当者を「恩人」と考え、わざわざ礼を言いにいったという。放送を通じて脱北民たちは金氏王朝に対する批判よりも世の中の普通の生活、ドラマ、時には天気予報などにも大きな関心を持ったようだ。韓国ドラマのダイジェスト版を見るだけで、自分達はだまされていると悟ったという声もあった。
北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)総書記は2020年末、住民への韓流の広がりを阻止するため「反動思想排撃法」を制定した。韓国ドラマを見たり、あるいは広めたりした場合は刑務所に送られ、時には処刑されることもあるという。またその頃から「南朝鮮」ではなく「大韓民国」という名称を使い、韓国を普通の外国の一つと認識させようとした。北朝鮮住民の脱出を阻止し、外部からの情報流入を遮断するため1400キロに渡る中朝国境を全て鉄条網で封鎖し、また一部の地域では地雷まで設置した。その上さらに放送までストップすれば、北朝鮮住民にとってのわずかな光明まで奪い去られてしまうだろう。
盧武鉉政権当時も北朝鮮は放送の中断を要求したが、これに対して国家情報院は「対北放送は平和統一という憲法の責務を履行し、北朝鮮内部の変化を実質的に誘導できる」として中断を阻止した。北朝鮮住民が直面している現状を考えると、対北放送は今20年前以上に必要なものになっている。
現政権は南北首脳会談を実現させるため北朝鮮にプレゼントを与え続けているが、今回それに加えて北朝鮮住民にとって唯一の情報源まで奪い去り、金正恩総書記をさらに後押ししている。ただしこれが北朝鮮住民を苦しめる大きな罪になっている事実も同時に理解しておかねばならない。
朝鮮日報/朝鮮日報日本語版
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