▲イラスト=UTOIMAGE
他国に対する中国の報復は1回の強力な制裁では終わらない。原材料や農水産物、輸出市場など相手国の弱みを突いてバルブを閉め、制裁の効果を常に調整する、いわゆる「報復の水道蛇口戦略」を中国は取り始めた。米国にはレアアース、韓国には限韓令(韓流禁止令)がその典型だ。他国に対するこの種の圧力はここ1-2年で法律・行政・市場が重なる構造となりさらに巧妙になっている。1回の大規模な攻撃よりも日常の執拗な圧力の..
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他国に対する中国の報復は1回の強力な制裁では終わらない。原材料や農水産物、輸出市場など相手国の弱みを突いてバルブを閉め、制裁の効果を常に調整する、いわゆる「報復の水道蛇口戦略」を中国は取り始めた。米国にはレアアース、韓国には限韓令(韓流禁止令)がその典型だ。他国に対するこの種の圧力はここ1-2年で法律・行政・市場が重なる構造となりさらに巧妙になっている。1回の大規模な攻撃よりも日常の執拗な圧力の方がより効果があることを中国が悟ったのだ。
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レアアースについてみると、中国では昨年10月1日に「レアアース管理条例」が施行され、採掘・精錬・流通・輸出の全てが1つにまとめられた。また同年12月には「両用物資統制施行令」により許可と審査の手続きが大きく見直された。その上で中国は米国を念頭に今年4月と10月の2回にわたりレアアース輸出を規制し、関連技術や海外生産にまでその管理の範囲を広げた。リストさえ変えればいつでも総量を調整できるレアアース報復システムを構築したのだ。中国による世界のレアアース加工・精製シェアは90%に達する。
2016年のTHAAD(在韓米軍の高高度防衛ミサイル)対立で始まった限韓令は当初の「全面禁止」から最近は「総量調整」へとその性格が変わった。2022年11月に中国ネットで6年ぶりに韓国映画のストリーミングが再開され、同年12月には韓国の7つのゲームが一気に許可された。しかし2023年に入ると外資版号(外国企業が開発したゲームに対する中国政府の許可)のリストは毎月大きく変わり、テーマパーク・映画・音源などの分野で中国国内の許認可はその時の韓中関係によってスピードと範囲が変わるようになった。
さらに恐ろしいことは中国が自国の損失を承知の上で「報復の蛇口」を確保している事実だ。世界最大の大豆輸入国である中国は2018年から米国産大豆輸入の縮小をカードとし、今年は米国産大豆の輸入を全面的に中断した。その結果トランプ政権支持者の怒りを招いた。
周辺国と何度も対立してきた中国は一つの制裁をテストし、どの圧力がどの国に有効かを学習した。版号リスト、レアアースのクォータ、企業制裁リストといった「固定手段」の強弱を調整し、圧力と懐柔を自在に組み合わせ、他国が常に中国の顔色をうかがうよう仕向けている。さらに法律・行政・市場が一体で動く国家システムを持つため蛇口の性能は保証されている。
蛇口戦略のゴールは明確だ。対立する相手国を交渉テーブルに引き出して自国に有利な状況を作り、内需の拡大に加え半導体・AI(人工知能)・エネルギーなど戦略産業分野が自立する時間を稼ぎ、それにより外圧への耐性を高めることにある。今後、韓国も中国との交渉で一方的に押し切られず国益を守るには、中国向けの蛇口を早急に確保しなければならない。
北京=李伐飡(イ・ボルチャン)特派員
朝鮮日報/朝鮮日報日本語版
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