▲グラフィック=キム・ヒョングク
韓国に進出した中国のゲノム分析企業が韓国人のゲノム情報を海外に持ち出して分析を進めているにもかかわらず、韓国政府は実態把握さえしていないことが分かった。ゲノムは遺伝的特性と疾病リスク、薬物反応などを把握できる遺伝情報の総体であり、最も重要な生体情報(バイオデータ)だ。
本紙が韓智雅(ハン・ジア)国会議員(国民の力)を通じて入手した保健福祉部の答弁書によると、直近の5年間でゲノムなど人体情報の国外..
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▲グラフィック=キム・ヒョングク
韓国に進出した中国のゲノム分析企業が韓国人のゲノム情報を海外に持ち出して分析を進めているにもかかわらず、韓国政府は実態把握さえしていないことが分かった。ゲノムは遺伝的特性と疾病リスク、薬物反応などを把握できる遺伝情報の総体であり、最も重要な生体情報(バイオデータ)だ。
本紙が韓智雅(ハン・ジア)国会議員(国民の力)を通じて入手した保健福祉部の答弁書によると、直近の5年間でゲノムなど人体情報の国外持ち出し承認・申告に対する集計やチェックが行われていないことが判明した。保健福祉部は「生命倫理および安全に関する法律にゲノムなど人体情報の国外持ち出し承認・申告に関する条項がない」と説明した。韓国には関連法がなく、ゲノム情報の国外持ち出しを管理・監督していないことになる。ゲノム情報の海外流出と管理を厳格に行う主要国とは対照的だ。保健福祉部はまた、海外のゲノム分析企業の現況、実際に分析が行われる海外拠点、外国ゲノム分析企業との契約締結状況などについても「関連法に定めのない事項であり、該当資料はない」とした。
■中国企業、韓国人の生体情報が集まる建物に入居
ソウル市江西区禾谷洞の韓国健康管理協会本部。8階建てビルの4階は協会の全国17支部の健康検診センターから送られてきた検体などを分析する中央検査本部であり、5階共有実験室「メディオープンラボ」にはバイオスタートアップなど17社が入居していた。5階の共有実験室の入り口の壁に掲げられた入居企業のリストの中央に「ノボジーン(Novogene・諾禾致源)」という社名があった。ゲノム分析サービスの売上高ベースでは、世界最大手レベルのノボジーンは、北京に本社を置く中国企業だ。今年6月、ノボジーンコリアを設立し、韓国に進出した。韓国でゲノム分析を受注し、入手したサンプルを中国とシンガポールの分析センターに送り、ゲノム分析を実施していることで論議を呼んできた。韓国健康管理協会を管理・監督する保健福祉部は、協会本部の建物にノボジーンコリアが入居している事実さえ知らなかった。ノボジーンが子会社としてノボジンコリアを設立すると、韓国で生体情報の海外持ち出しを懸念する声が上がったが、監督官庁が法人の所在地さえ把握していなかったことになる。保健福祉部は本紙に対し、「ノボジーンの入居は9月中旬、李妵鍈(イ・ジュヨン)国会議員(改革新党)の資料要求で把握した」と明らかにした。
■ノボジーン「韓国人のゲノムは中国で分析」
ノボジーンはゲノム分析企業BGI(北京ゲノム研究所)で副総裁を務めた李瑞強氏が2011年に設立した。BGIは52カ国で800万人以上の妊婦のゲノムデータを中国人民解放軍と共有した疑惑で米議会が法制化を進める「バイオ保安法」の規制対象企業に挙がっている。ノボジーンは2023年、台湾の学校・病院などでゲノム検査を低価格で受注した後、ゲノムデータを中国に持ち出して論議を呼んだ。李妵鍈議員は「韓国健康管理協会は全国の健康診断の約10%を担い、膨大な医療データを蓄積してきた。それを活用して統合的研究を実施可能だと広報している」と述べた。ノボジーンコリアが健康管理協会本部の建物に入居したのは、韓国人の健康診断データの入手が理由である可能性があるとの主張だ。
これについて、ノボジーンは本紙の取材に対し、「韓国で収集されたサンプルは中国またはシンガポールにある自社施設に移転し、分析が行われる。個人のゲノムデータを収集・処理しないので個人情報漏えいの恐れはない」と説明した。中国に持ち出して分析するゲノムが誰のゲノムなのか、個別には区別していないという意味だ。また、健康管理協会の建物に入居したことについては、「協会の生物学的サンプル、健康データベースまたは内部システムにはアクセスできない」とした。
■人体情報保護法の必要性
科学技術界からは、ノボジーンが説明するように、ゲノムを個人を識別していなくても、生体情報自体が国家安全保障に直接関わるため、国外持ち出しは危険だと指摘する声がある。韓国人の生体情報を大量に入手すれば、韓国人がかかりやすい病気を把握し、それを治療する新薬を開発できるためだ。コロナ禍のように、外国に治療薬を依存する状況が生じる可能性がある。韓国人を狙った生体兵器を開発するためにゲノム情報が悪用される可能性もある。
主要国はゲノム情報を厳格に管理している。中国は人類遺伝資源管理条例でゲノム情報を国家戦略資産に指定し、国外持ち出しを事前許可・保安審査の対象に含め、厳格に規制している。ゲノムなど敏感な個人情報に関して「懸念国家」によるアクセスを制限する大統領令を出した米国は今年、司法省が具体的な施行規則を発表した。米国防総省は今年1月、BGIやMGI(華大智造)など中国のゲノム分析企業を中国の軍事企業リストに含めた。欧州連合(EU)は今年、欧州保健データスペース(EHDS)に関する規定を設け、ゲノムなど生体情報を国家が統合管理し、研究目的の使用もセキュリティー規定で厳格に規制を始めた。韓智雅議員は「海外ではゲノムなどの人体情報を国家戦略資産として扱っているが、韓国は政府が国外持ち出しも傍観したままで事実上手をこまぬいている。国民の人体情報を保護するための法律を一日も早く制定すべきだ」と主張した。
郭守根(クァク・スグン)記者
朝鮮日報/朝鮮日報日本語版
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