▲グラフィック=朝鮮デザインラボ、ハン・ユジン
ベトナムが中国に対抗して、南シナ海で過去4年間に計21の独立的な人工島を建設したという。ウォールストリート・ジャーナル(WSJ)紙が戦略国際問題研究所(CSIS)の報告書や衛星写真の独自分析を通して3日付で報じた。
CSISの今年3月の報告書によると、ベトナムは2021年から南市中尾のスプラトリー諸島(中国名:南沙諸島)において岩礁や岩盤、サンゴ礁などを埋め立てて軍事的に強化された人工島を構築し..
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▲グラフィック=朝鮮デザインラボ、ハン・ユジン
ベトナムが中国に対抗して、南シナ海で過去4年間に計21の独立的な人工島を建設したという。ウォールストリート・ジャーナル(WSJ)紙が戦略国際問題研究所(CSIS)の報告書や衛星写真の独自分析を通して3日付で報じた。
CSISの今年3月の報告書によると、ベトナムは2021年から南市中尾のスプラトリー諸島(中国名:南沙諸島)において岩礁や岩盤、サンゴ礁などを埋め立てて軍事的に強化された人工島を構築した。これらの島々は中国だけでなく台湾・フィリピン・マレーシア・ブルネイとも領有権が重なる地域に位置している。
【写真】ベトナムが構築した人工島
WSJによると、スプラトリー諸島に構築したベトナムの人工島には複数の港湾や大型軍用機の発着できる3200メートルの滑走路、弾薬貯蔵施設、重火器を配備した防御施設が設けられている。
南シナ海には、世界の海上貿易量の30%、年間3兆-3.5兆ドル(現在のレートで約461兆-538兆円)規模の物流がある。また、中国の台湾武力侵攻時における米海軍力の主要補給ルートでもある。
ベトナムの人工島は、スプラトリー諸島で2013年末から本格的に人工島を構築して軍事施設化した中国への対抗であり、同時に、ベトナムが南シナ海で軍事力を投射できる基盤を提供するものだ。
ベトナムは同諸島内で自国が占有している干潮露出地(干潮時にのみ水面上に現れる岩礁や砂洲)および岩礁21カ所全てで新たな土地を造成した。中国はスプラトリー諸島に七つの人工島を保有している。
米国のシンクタンクCSISの3月の報告書によると、その結果、ベトナムは3月現在で南シナ海に計8.9平方キロ規模の人工島を造成した。これは、中国の16.2平方キロに続いて2番目に大きな規模だ。
この中でも、ベトナムが構築した最も大きく精巧な人工島は「バーク・カナダ礁(Barque Canada Reef)」。ここでは、天然のサンゴ礁によって保護された浅水域(ラグーン〈lagoon〉)の港湾に多数の埠頭(ふとう)を設置し、長さ3200メートルの滑走路と弾薬庫も建設した。現在も、追加拡張のために海の土や砂を掘るしゅんせつ船が活動している。
また、かつては幾つかの建物があるだけだった「サンド礁(Sand Cay)」も、数年を経て大型港湾や軍事施設を備えた大型海上要塞(ようさい)に変貌した。
一方、中国は、さらに北にあるパラセル諸島(中国名:西沙諸島)にも多数の人工島を設置した。1974年1月19日、当時の南ベトナム政府はパラセル諸島の一部の島を占領した後、中国と激しい海戦を繰り広げ、このとき数十人の南ベトナム兵が死亡した。その後、中国はパラセル諸島全域を占領して海南省三沙市の行政区域として支配している。
中国はパラセル諸島でも、ウッディー島(中国名:永興島)、ツリー島(中国名:趙述島)、ドラモンド島(中国名:晋卿島)という三つの主要な島に長さ2700メートルの滑走路や格納庫、ミサイル基地、レーダー基地、海岸防御施設を設けた。しかしベトナム統一後、ハノイ政府はパラセル諸島の領有権を主張し、中国と摩擦を起こしている。
中国はこのほかにも、2012年4月には海上封鎖・接近阻止などを通してフィリピンからスカボロー礁(Scarborough Reef)を奪った。2016年に、この海域に対する中国の領有権主張には法的根拠がないという国際常設仲裁裁判所(PCA)の仲裁判断が出たにもかかわらず、実効支配を続けている。
中国は南シナ海の人工島を兵力の長期駐屯や給油目的の基地として活用し、広範囲のレーダー監視システムを設置して周辺諸国の海上活動を監視している。
しかしベトナムの南シナ海人工島構築と軍事化に対しては、中国だけでなくこの海域の他の国々もおおむね黙認しているのが実情だという。現在のベトナムの海軍力・空軍力では、全面戦が発生した際にこれらの人工島を実質的に守るのは難しいとみられるからだ。CSISは「ベトナムも(中国と)似たやり方で新たな基地を利用するものとみられるが、他国に対して攻撃的な行動は取らないだろう」との見方を示した。
ボストン・カレッジのカン・ブー(Khang Vu)客員研究員は、WSJ紙の取材に対して「中国の人工島建設は東南アジアの国々の経済的利害と航行権を脅かしたが、ベトナムがそうしたやり方で行動すると思っている人はほとんどいない」と語った。
中国も、スプラトリー諸島でベトナムのしゅんせつ船が人工島に接近することを物理的に妨げていない。これは、セカンド・トーマス礁を守るフィリピン海軍の哨所に接近する補給船を中国が阻止し、放水砲で攻撃を加えているのとは対照的だ。中国は、フィリピンを米国の「代理人」だとみている。
反面、ベトナムには、中国製品に高い関税を課す国々への迂回(うかい)輸出を行うために中国側が投資した数千の工場が存在する。また、両国とも共産党が支配しており、対立を防止しようとする「非公式のコミュニケーションチャンネル」を維持しているはずだという見方もある。
米国も、中国の人工島構築は公に批判しながら、ベトナムの人工島については中国に対する「潜在的な防壁」と見なし、表立っては何も言わない。
李哲民(イ・チョルミン)記者
チョソン・ドットコム/朝鮮日報日本語版
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