世界的に大ヒットしている日本のコンピューター格闘ゲーム「鉄拳3」で テコンドーの技を駆使するキャラクター、ファラン(花郎)の実在のモデルである黄秀一(ファン・スイル/35)師範が21日、韓国を訪問した。黄師範は、韓国人の父親と日本人の母親の間に生まれた在日韓国人3世だ。
黄師範は、国際テコンドー連盟(ITF)韓国支部が24日、漢陽(ハニャン)女子大で主催する「伝統テコンドーITF」セミナーに参加し、「テコンドー動作の原理と歴史」について解説する予定だ。
韓国が宗主国になっている世界テコンドー連盟(WTF)は現在、北朝鮮の張雄(チャン・ウン)国際オリンピック委員会(IOC)委員が総裁を勤めているITFと技術統合を論議している。
黄師範は、東京の朝鮮大学4年生だった1992年、平壌で開催された第8回ITFテコンドー世界選手権大会“マッソギ”(組手)部門ライト級で、在日朝鮮人チームとして出場し、優勝した。当時、国旗として韓半島旗が掲げられ、国歌は“統一の歌”が演奏された。
黄師範の華麗なパルチャギ(蹴り)が知られるようになり、1996年に日本のコンピューターゲーム制作会社ナムコ(NAMCO)がある提案を持ちかけてきた。
当時、ナムコには「ゲームでテコンドーをするキャラクターの動きが、実際のテコンドーの動きと違う」という評価が寄せられていた。そこで10時間にわたり黄師範の動作を撮影し、これをもとに“ファラン”のキャラクターを誕生させた。
黄師範は、「完成品として販売されたゲームの“ファラン”を見たら、想像していたよりかっこいい出来になっていた。本当に私とそっくりで、欠点までもそのままだった」とし、「世界のどこに行っても“ファラン”が活躍しているのを見ると、私がテコンドーを世界に広めるのに大きな役割を果たしたという満足感を感じる」と話した。
朝総連系の三多摩第1初中級学校で野球の選手として活躍していた黄師範は、崔泓熙(チェ・ホンヒ)さんの弟子であるパク・ジョンテ師範のパルチャギに魅了され、テコンドーの道に入った。現在は、東京で6つ道場を運営し、400人の弟子を指導している。
黄師範が24日のセミナーで講演をする内容のメインは、「サイン(sine)曲線理論」だ。日本の空手が静的な姿勢から拳や足を伸ばすとすれば、テコンドーは体を上下に移動させ、上から下に体重が移動する瞬間に打撃(攻撃)をかけることにより、体が受ける重力まで加わり破壊力が倍増する。
「サイン曲線理論」とは、テコンドーの打撃の瞬間を数学のサイン曲線を使って説明した理論で、崔泓熙前ITF総裁が提唱した。黄師範と共に韓国を訪れたアンディ・メンシア米国テコンドー連盟(USANTF)会長は、「1990年代半ばから柔道でもサイン曲線理論を導入している」と話した。
黄師範は、ITFテコンドーが最強だと信じている。時折、WTFテコンドーを学んだ選手たちとも組み手を交わし、「こんな技もあるんだ」と思うこともあるという。WTF所属でないので、オリンピックには出場できなかった。
黄師範は、「私の国籍は大韓民国」とし、「最近、ITFとかWTFとか騒がしいが、テコンドーは元々1つだった」と話した。