麻薬の密輸で莫大な「忠誠資金」を稼ぎ、軍や党の幹部に献上
北朝鮮当局、クーデター恐れ事件をもみ消し
昨年6月のある日、平壌では金正日(キム・ジョンイル)総書記(67)が出席する予定だった「金正日党事業開始44周年記念中央報告大会」を前に、厳戒態勢が敷かれていた。金総書記が出席する「1号行事」であるだけに、保衛司令部の係員らが動員され、出席者たちの所持品を検査するとともに、たばこやライターなどは回収して保管した。
外貨稼ぎを担当する朝鮮人民軍直属の「錦繍合作貿易総会社」のキム・ソンフン代表も例外ではなく、所持品を係員に預けた。特殊部隊の将官だったキム代表は、韓国にも十数回侵入し、「共和国英雄」の称号を授与された軍の実力者で、「ソンフン翁」と呼ばれ親しまれていた。そのキム代表からたばこを預かった保衛部の係員は、たばこ1本を密かに抜き取り、深々と一服していたが、間もなく意識を失い、病院に運ばれる途中死亡した。
平壌は大騒ぎとなった。金総書記は行事への出席を取りやめ、キム・ウォンフン保衛司令官(大将)が直接調査に乗り出した。係員の死因は「麻薬の大量摂取」という意外なものだった。人民軍の将官や朝鮮労働党の幹部数十人が関与した、北朝鮮史上最大の「麻薬スキャンダル」が発覚した瞬間だった。北朝鮮情勢に詳しい複数の消息筋は29日、「最近北朝鮮を脱出した保衛司令部の元幹部A氏の証言で、こうした事実が確認された」と話した。