南米や欧州で暗躍した韓国人「麻薬王」

スリナムの大統領と親交、欧州に1600億ウォン相当のコカイン密輸

 南米や欧州を舞台に、時価1600億ウォン(約119億円)相当のコカインを密売していた韓国人が検察に逮捕された。

 ソウル中央地検強力(凶悪犯罪担当)部(キム・ヒジュン部長)は19日、2004年から05年にかけ、韓国人の主婦などを利用し、南米から欧州にコカイン48.5キロ(時価1600億ウォン)を密輸した疑いで、J容疑者(59)を起訴した。コカイン48.5キロは、160万人が同時に使用できる量だ。検察によると、1980年代に船の冷凍空調技士として働いていたJ容疑者は94年、マンションの建設をめぐる詐欺容疑で指名手配され、南米大陸北部の大西洋沿岸にあるスリナムに逃亡、麻薬の密売に手を染めた。冷凍空調技士時代にスリナムに8年間滞在したJ容疑者は、95年に同国の国籍を取得し、現地の麻薬密売組織とかかわりを持ち、同国のデシ・ボーターセ大統領と親交があったと供述しているという。

 現地人たちをコカインの仕入れ役として利用したJ容疑者は、捜査機関の監視を逃れるため、韓国で運び役を募集した。J容疑者は「宝石の原石を運べば、400万-500万ウォン(約30万-37万円)支給する」とだまし、専業主婦や大学生、美容室の従業員などを運び役に仕立てたという。

 運び役たちは南米に渡り、コカインが入ったスーツケースを受け取り、フランスやオランダなど欧州諸国の麻薬組織に届けた。

 J容疑者による麻薬密売は02年10月、南米のフランス領ギアナからパリのオルリー空港を経由し、コカイン37キロを持ち込もうとした運び役の主婦(41)ら2人がフランス警察に逮捕されたことで、捜査機関にマークされることになった。05年3月には、ペルーのリマ空港からオランダへコカイン11.5キロを運ぼうとした男性(46)が現地の捜査当局に逮捕された。

 逮捕された運び役たちは、大西洋にあるフランス領の島にある刑務所などで1-5年間服役した、と検察は話した。

 検察は05年、国際刑事警察機構(インターポール)を通じてJ容疑者を指名手配し、4年後の09年7月、J容疑者はブラジル・サンパウロの空港で同国の連邦警察に逮捕された。検察は先月26日、犯罪人引渡し条約に基づいてJ容疑者を韓国に移送し、取り調べを行ってきた。

 J容疑者は検察の調べに対し「02年に初めてコカインの密輸に関与し、スリナムの犯罪組織の提案で、04年から密輸を続けてきた」と供述したという。検察がこれまでに確認した韓国人の運び役は12人に上る。だが、検察はJ容疑者が、約100人分の韓国人のパスポートのコピーを持っていたことなどから、J容疑者による犯行の規模はさらに大きいとみている。

 J容疑者は運び役を集めるため、韓国で派遣会社を設立しようとしていたことも分かった。

アン・ジュンヨン記者
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