しかし、北朝鮮の経済難や硬直した南北関係の現状を考慮すると、これらが実際に償還される可能性は小さい。金大中・盧武鉉両政権は北朝鮮が返済を拒否した場合に備えるための安全装置を準備しなかったためだ。
韓国政府筋は「北朝鮮は南北関係が硬直状態にある責任を韓国側に押し付けており、韓国が制裁を解除しなければ、返済には応じないと言ってくるだろう。その場合、回収できなかった分は未収金として処理される」と述べた。
借款契約書には「定められた時期に返済が行われなかった場合、2%の延滞利子が付く」という趣旨の記載があるが、これを強制する手段は書かれていない。さらに「未償還問題は(南北が)協議を行うことができる」と定められているが、北朝鮮がこの協議に応じるかも未知数だ。
韓国政府は食糧や軽工業用原材料の借款に加え、2002年から08年には南北間の鉄道、道路連結事業を行うため、南北協力基金から5852億ウォン(約394億円)を支出した。そのうち北朝鮮側の区間に関しては、韓国が借款形式で資材や建設機器などを提供しているが、これは1494億ウォン(約101億円)に上る。これについても北朝鮮は10年据え置き・20年償還・年利1%の条件で返済しなければならない。
ただし、これについて返済を受けられる可能性はさらに小さい。この借款の返済条件は「工事完了から10年据え置き・20年分割償還」となっているが、現政権発足後は工事そのものが中断しているからだ。統一部の関係者は「返済を受けるには、南北間で追加の協議が必要だろう」と話している。
韓国政府がKEDOを通じて北朝鮮の軽水炉建設事業に融資した1兆3744億ウォン(約925億円)と、その利子9000億ウォン(約606億円)を回収するのも非常に難しい。当時の契約書によると、北朝鮮は軽水炉完成時に20年分割で建設費をKEDOに返済し、KEDOはそれを改めて韓国政府に返済することになっている。しかし、軽水炉建設事業は2006年に工事全体のわずか37%が完了した時点で完全にストップした。韓国政府の関係者は「KEDOは北朝鮮に請求書を送り続けているが、北朝鮮からは何の反応もない」と語った。