「長寿大国・日本」の影…年間10万人が介護離職

介護休暇を申請すれば人事上の不利益…福祉方面に転職するケースも
日本政府、介護離職を防ぐため補助金支援・在宅勤務制導入

「長寿大国・日本」の影…年間10万人が介護離職

 大阪に暮らす独身女性のAさん(52)は、電子メーカーの顧客相談センターで相談員をしていたが、ある日突然解雇を通告された。認知症を患う母親(80)の介護のため遅刻が多い、というのが理由だった。Aさんは会社に「母親の具合が突然悪くなり、やむを得ず遅刻した」と説明したが、会社側は人員削減中で、派遣社員のAさんをまず解雇した。

 日本では、年間10万人以上が介護のため職場を離れている。介護のために、もう少し時間的余裕のある仕事を探すのだが、年間7万3000人程度が「介護失業者」に転落する。日本政府の調査では、仕事とともに介護も行っている労働者の数は291万人に上り、これは専業主婦を含め仕事を持たずに介護を行っている人(266万人)よりも多い。というのも、かつては専業主婦がもっぱら介護を受け持ってきたが、共働きの夫婦や独身者の増加で、仕事とともに介護も行う労働者が急増しているからだ。柳沢健一さん(61)は、仕事を持っている妻が母親の介護に消極的だったため、会社を辞めた。柳沢さんは「話し相手もおらず、毎日家で母親の面倒を見るのはとてもつらい」と語った。こうした男性介護者のための全国的な市民団体も結成された。

 日本政府は、既に2005年に介護休暇制度を導入、最大で年間93日の介護休暇を保障した。しかし4月7日付の朝日新聞は「介護休暇の実際の利用率は3.2%にすぎない」と報じた。通常、休暇は2週間前に申請しなければならないため、要介護者の体調が突然悪くなるケースでは利用しづらい。

 さらに大きな問題は、会社の雰囲気だ。介護休暇を申請すれば、人事上の不利益を被る恐れがある。ある独身男性(50)は、酒席で両親の介護の大変さを語ったが、その後子会社に出向させられた。「介護のせいで残業もできない人に、管理職など任せられない」という悪口に苦しんだ結果だった。福祉方面に転職するケースもある。

 高齢化時代を迎えた日本で、介護離職や介護失業という不安のない労働者は少ない。東京都庁の調査では、労働者の85%が「将来、仕事と介護を両立させることに不安を感じている」と回答した。

 このため日本政府は、まず100社を選んで「介護と仕事の共存モデル」を作り、普及させるという方針を打ち出した。厚生労働省は、補助金を支給する代わりに、介護を行う社員に対し「勤務時間の柔軟な調整」「在宅勤務制度の導入」「勤務地の移動免除」といった支援を行うようにする予定だ。

 日本政府は、介護支援制度の改革も進めている。現在の介護支援施設は、専業主婦などもっぱら介護を担う家族がいることを前提にしているため、運営時間が午前9時から午後4時までのケースがほとんどだ。労働者の出退勤時間を考慮し、介護施設の運営時間を拡大する案を模索している。

東京=車学峰(チャ・ハクポン)特派員
<記事、写真、画像の無断転載を禁じます。 Copyright (c) Chosunonline.com>
関連フォト
1 / 1

left

  • 「長寿大国・日本」の影…年間10万人が介護離職
  • 「長寿大国・日本」の影…年間10万人が介護離職

right

あわせて読みたい