【コラム】米大使テロ、年老いた従北派集団の断末魔

 だがキム容疑者は依然として、20代のままの世界観を捨てられない「はく製になった486」だった。キム容疑者は駐韓米国大使を刃物で切り付け、韓米合同軍事演習への反対をその大義名分とした。警察に連行される際にも「戦争訓練のせいで離散家族が再会できない」と主張した。キム容疑者は今に至るまで、1980年代のデモの現場で飛び交った反米スローガンを叫んでいた。キム容疑者の意識構造は、大学時代のまま化石のように固まっていた。

 「年老いた従北主義者」たちの時代遅れな闘争は、キム容疑者に限ったことではない。祖国統一汎(はん)民族連合(汎民連)南側(韓国側)本部の盧修煕(ノ・スヒ)副議長が、故・金正日(キム・ジョンイル)総書記の弔問のため無断で訪朝したのは68歳のときだった。平壌を訪れた盧副議長は「その名前も恋しいわれわれの将軍様(金総書記)」と言って涙を流した。骨の髄まで従北派といわれる韓国進歩連帯の韓相烈(ハン・サンリョル)常任顧問は、60代のときに分別のない訪朝を敢行した。韓国海軍哨戒艦「天安」爆沈事件から3カ月後、北朝鮮に行ったかと思えば「李明博(イ・ミョンバク)こそが天安事件の元凶だ」と言ってのけた。

 中高年層が従北的な運動圏の中心にならざるを得ない理由は簡単だ。若い人たちが運動に関与しなくなったためだ。「反米」「反資本主義」「搾取VS被搾取」といった時代遅れな階級闘争路線に同調する若者たちはもういない。解散した統合進歩党の党員の70-80%は40代以上だった。全国教職員労働組合(全教組)もまた、所属する教員のうち20代は2.5%にすぎない。そのため、一般社会では第一線を退く50-60代が、運動圏では先頭に立たざるを得ない状況だ。

 キム容疑者の犯行を見ていて、従北派の運動圏の集団ヒステリーを思い出す。現在の従北派グループは、時代錯誤なパラダイムのため、国民からそっぽを向かれ孤立している。個人が閉鎖された空間で恐怖を感じるのと同じように、集団も社会からそっぽを向かれて孤立すると、過激なヒステリー反応を示した。

 高齢化した従北勢力はいつか死滅することになる。だが、それまでにより暴力的、非常識的な行動を見せる可能性もある。人が死ぬときに感じる最後の苦痛を「断末魔」という。キム容疑者の今回の凶行は、従北勢力の集団的な断末魔のように感じられる。

朴正薫(パク・チョンフン)デジタルニュース本部長
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