【萬物相】九州大学医学部の勇気

【萬物相】九州大学医学部の勇気

 ドイツのシュツットガルトに2005年にオープンしたベンツ博物館は「死ぬ前にぜひ見ておくべき世界の建築」に挙げられる優れた建築物だ。ベンツ120年の誇りに満ちたこの場所には、ふらりと見て回るにはふさわしくなさそうなコーナーがある。第2次大戦中のベンツを振り返るコーナーだ。案内板には、このように書いてある。「われわれはヒトラーの武器生産に加担した。そのために、強制徴用された労働者を多数用いた。これらの労働者は、収容所でひどい扱いを受けた」。その横には、強制徴用された労働者の劣悪な労働現場を描いた当時の絵が展示されている。

 個人であれ組織であれ、自分の誤りを認めて暗い過去を打ち明けるというのは、容易なことではない。鉄鋼メーカーのクルップは、100年の社史に、社員が「ハイル・ヒトラー」と叫んで右手を振り上げているナチス政権時代の写真を載せた。また同書には、敗戦後、ナチスに加担していた同社のオーナーが米軍憲兵のジープに乗せられていく写真も載っている。

 有名ファッションブランドのヒューゴ・ボスは、ヒトラー・ユーゲントや親衛隊(SS)の制服を作った。同社の支援を受けて2011年に出版された書籍は「設立者ヒューゴ・ボスは、同社を生かすため、やむを得ずナチスに協力したと語ったが、事実ではない」と念を押した。ヒューゴ・ボスは早くからヒトラーを信奉し、自己の利益のため、積極的にナチスに協力したと記した。ヒトラーの要求に基づき「かぶとむし」のような国民車(フォルクスワーゲン)を作ったフォルクスワーゲンは、強制労働の記念館まで作り、新入社員に見学を義務付けている。過去を直視しようとするこうした努力が集まって「反省することを知っている国」ドイツをつくったのだ。

 「こんなむごいことを、われわれがやりました」。太平洋戦争中に米軍の捕虜に対して行った生体解剖実験を、九州大学医学部が70年を経て告白したという記事が、きのう本紙に載った。89歳になる当時の医大生が、生きている米軍捕虜の肺を取り出し、捕虜の血管に海水を注入したと証言した。九州大学は4日、医学歴史館のオープンに伴い、生態解剖実験の実相を伝える記録物を展示した。

 第2次大戦で物資を生産していた工場を、国連教育科学文化機関(ユネスコ)の世界遺産にしようというのが日本政府だ。北海道のある村が、強制徴用された朝鮮人の慰霊碑を建てようとしたら、日本の右翼は「売国村の水産物不買運動をやる」と脅迫して中止させた。こうした雰囲気の中で、九州大学の告白は勇気ある行為だ。昨年は、100歳になった日本人が、およそ70年前に東京近郊の秘密研究所で細菌兵器や殺人光線の開発に加わっていたことを証言した。日本の一般人の中には、まだ良識と勇気を持って過去を真っすぐ見ようとする人が多いと信じたい。

金泰翼(キム・テイク)論説委員
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