韓国の妊婦はなぜ帝王切開を選ぶのか

医療紛争を恐れる医師らが「簡単な出産」選択
自然分娩の診療報酬の低さ、報酬定額制も原因か

 京畿道河南市に暮らす主婦のAさんは今年3月初め、ソウルの江東慶熙大病院で第1子となる娘を出産した。42歳で授かった待望の子どもだった。地元の産婦人科で出産しようとしたが、初産にしては高齢のため帝王切開を勧められた。Aさんは分娩で出産の喜びを味わい、出産直後に母乳を与えたかったことから、同病院で自然分娩した。だが、Aさんはまれなケースだ。高齢の妊婦のほとんどは帝王切開で出産するためだ。

■帝王切開率はなかなか下がらず

 江東慶熙大病院のソル・ヒョンジュ教授(産婦人科)、ペ・ジョンウ教授(小児科)らの研究によると、韓国の帝王切開率は1980年代初めには4-5%だったが、次第に上昇し、96-97年に30%を突破した。99年には43%まで上昇した。その後、政府が各病院の帝王切開率を公表し、低い病院にはインセンティブ、高い病院にはペナルティーを与えることで帝王切開を減らそうとしたため、2003年には38%に低下した。

 だが、ここ10年間は36-37%台が続いている。12年は36.9%だった。新生児の10人に4人近くが帝王切開手術によりこの世に誕生していることになる。韓国の帝王切開率は経済協力開発機構(OECD)加盟国平均(26.9%)に比べ10ポイント高い。世界保健機関(WHO)は10-15%を勧奨している。

 帝王切開は産婦の健康を害することもある。出産と関連した合併症や出産が原因の病気を患う比率(2.7%)は自然分娩(0.9%)の3倍だ。また、自然分娩は3日ほど入院すれば済むが、帝王切開は回復に時間がかかるため6日ほど入院せねばならない。帝王切開で出産すると母乳の分泌も遅く、授乳がうまくいかないこともある。

■帝王切開が減らない理由は?

 産婦人科医らは、帝王切開が減らない大きな理由として高齢出産の増加を挙げる。35歳以上の産婦が全体に占める割合は01年の8.4%から12年には21.6%に上昇した。一般的に、35歳を超えると高齢によるハイリスク産婦とされるが、こうした産婦が帝王切開を受ける人の半分近くを占める。産婦の平均年齢も05年に30歳を超え、昨年には32歳に上昇した。20代の若い産婦が次第に減っていることになる。OECD平均は約29歳だ。

 だが、出産の高齢化だけが帝王切開が多い理由ではない。英国やスペインなども産婦の平均年齢が韓国と同水準だが、帝王切開率は24-25%台にとどまっている。オランダは15%だ。

 ソル・ヒョンジュ教授は「自然分娩による医療紛争を恐れ、医師や妊婦が簡単に出産できる帝王切開を選ぶ傾向にある」と説明した。また「高齢の産婦が増え、肥満や糖尿病などによるハイリスク出産も増えているにもかかわらず、医療スタッフが長時間そばについている自然分娩に対する診療報酬が依然として低く、医師たちが快く(自然分娩を)しようとしないことも原因だろう」と付け加えた。

 このほか、帝王切開が包括報酬制(診療報酬定額制)となり、自然分娩がうまくいかずに帝王切開することになった場合、自然分娩を試みた部分に対する費用が認められないため、最初から帝王切開をするケースが増えているとも指摘される。

金哲中(キム・チョルジュン)医学専門記者
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