だが食堂オープン後の4月末、株価は下がり、翌月は「お目玉デー」となった。そして5月31日、オープン以来で初めて株価が前月平均を上回った。約束通り今月17日、社員が歓声を上げる中、マグロの解体ショーが行われた。
カブテリアの話を初めて聞いたときは、ただ「おもしろい」と思っただけだった。新聞社でいえば、特ダネが多かった月はカルビ蒸しやガンギエイの刺身、特落ち(他社の特ダネを載せそこなうこと)が多かった月は冷やご飯にキムチ、ということだ。「それならがんばるしかないな」と笑った。
もう一度考えてみたのは、後になってからだ。社員たちが「お目玉」メニューを食べている様子がテレビカメラに映り、年配の役員たちが配膳をしながら「来月はなんとか良いものが食べられるように頑張りましょう」と話しかけていた。同社によると、役員が配膳するのは「社員だけでなく役員も反省しようという趣旨」だという。お目玉メニューに「1950年代の給食」を選んだ理由も、察しがつく。9年前に他界した創業者の安藤百福氏が自宅の粗末なガレージで世界初のインスタントラーメンを発明し、大ヒットを飛ばした「初心の年」が1958年だった。