【コラム】文大統領の伽耶はなぜ世界遺産になれないのか

 前述した「卓越した普遍的価値」の基準は大きく三つある。真正性、完全性、地域性。その遺産が本物で信頼できるものなのか、当初の状態に近い形で維持されているか、該当地域は保存準備ができているか、ということだ。伽耶にとっては一つ目の敷居から高かった。検証されていない主張を事実であるかのように説明して物議を醸した国立中央博物館の「伽耶本城」展示が示すように、2000年前の古代王国は依然として大部分がミステリーだ。伽耶当代の資料である中国・陳寿(233-297)の「三国志 魏書 東夷伝」には、当時、韓半島に78の国があったと書かれている。古墳群の現存は明らかな事実であるが、これが全て伽耶なのか、一部は新羅や百済なのか、もしくは全く別の小国なのか知ることができない、というのが学者たちの判断だ。2013年に暫定リストに初めて名を連ねたときは、申請自治体は金海市・咸安郡・高霊郡の三つだけだったが、17年の文大統領の「国政課題宣言」以降、地方自治体は七つに増えた。「卓越した普遍的価値」に合意するのが一層難しくなったのはもちろんだ。

 世界遺産は国ごとに毎年一つしか申請できない。各国の無分別な申請に驚いたユネスコが、18年にこのような措置を取ったのだ。その直前の2017年、ユネスコは事前審査で、朴元淳(パク・ウォンスン)ソウル市長が全力投球していた「漢陽都城世界遺産」プロジェクトに「不記載」の判定を下した。保留(記載延期)でもなく、差し戻し(情報照会)でもない、最下位等級の「不記載」だ。600年の歴史を持つ都城とはいうものの、行政的に管理されているだけで、現代まで続く伝統と考えるのは困難だという理由だった。ユネスコはすでに韓国など数か国を要注意国として警戒しているという。

 世界遺産は、特定の世界的機関がその価値を先に調べて指定してくれるものではない。「大切に守り抜く価値があるとわれわれが認めたから、今後は世界の人々とその価値を享受しよう」という約束だ。このままでは、われわれの古代の王国を「悲しい伽耶」にしてしまうだけだ。

魚秀雄(オ・スウン)週末ニュース部長

前のページ 1 | 2 次のページ
<記事、写真、画像の無断転載を禁じます。 Copyright (c) Chosunonline.com>
関連フォト
1 / 1

left

  • 【コラム】文大統領の伽耶はなぜ世界遺産になれないのか

right

あわせて読みたい