ゴーン元会長もレバノンでの記者会見で「日本の司法制度は基本的な人権原則までも破っている」「妻に会いたかった。会うことを禁止されたまま裁判だけを待つことはできなかった。日本で死ぬか、そうでなければ脱出するかだった」と攻撃した。ゴーン元会長の容疑をめぐる本人と検察の攻防が一般人には分かりにくく、争う余地があるのとは異なり、国際社会への波及力のある訴えだった。
ゴーン元会長の容疑の内容はともかく、日本の検察による別件捜査と被疑者の人権侵害の様子は、われわれも見慣れているものだ。積弊清算という名目で前政権の人物に対して加えられた過酷な捜査によって、複数の人物が命を絶った。程度が異なるだけで、こうした振る舞いは過去の政権にもあった。しかし、青瓦台(韓国大統領府)の独裁的な介入によって、検察改革は権力からの独立と中立性の確保というまた別の価値の原点に立ち返った。人権侵害問題によって検察改革にエンジンがかかったが、青瓦台の偽善的行為とダブルスタンダードによって、進む道を失い、とんでもない泥沼にはまってしまった。隣の国で起きたゴーン事件を、「日本が肩透かしを食らった面白い笑劇」と笑い飛ばすわけにはいかない理由がここにある。
チェ・ウォンソク国際経済専門記者