【コラム】ペルシャ湾と日本海

 イランはことのほか格式張った国だ。イランの商店に行って「これはいくらですか」と尋ねると、「あなたに比べれば、これはあまりに価値がない」と言って金を受け取ろうとしない。店の主人はもちろんアルバイトの店員までもが、代金を払おうとする客に少なくとも2、3回は遠慮する「ふり」をして、客が「お願いですから」と頼んでようやく、仕方なく金を受け取る。

 お互いに心地よい言葉をやりとりすることで格式を整えるイランの文化を、ペルシャ語では「タローフ」という。これは、イランに進出する外国実業家にとって必須の熟知事項だ。「ああ、それいいですね」と言うイランのバイヤーの好意的な一面だけを見ていては、後で慌てふためく可能性が高い。彼らは物事をあいまいに話し、心の中では嫌っていても、表向きは好ましいとして格式を整えるからだ。

 外交でも同様だ。2013年から15年にかけてイラン核交渉たけなわだったころ、米国の外交官は、やるべきことが他国のケースに比べ倍もあったという。イランの外交官が話していることがどこまで真意なのか、「解読」しなければならなかったからだ。イランの社会科学者キアン・タジバクシュ氏は「米国でイエスはイエスだが、イランでイエスは、イエスであることもそうでないこともあり得る」として、「外交問題で慌てないようにするには、『タローフ』を理解しなければならない」と指摘した。長期間イランの生活と文化に関心を持ち、理解の幅を広げてこそ、イラン人の真意が何なのか理解でき、イラン人を説得する能力も備わる、というわけだ。

ノ・ソクチョ政治部記者
前のページ 1 | 2 次のページ
<記事、写真、画像の無断転載を禁じます。 Copyright (c) Chosunonline.com>
関連ニュース
関連フォト
1 / 1

left

  • ▲ノ・ソクチョ政治部記者

right

あわせて読みたい