【朝鮮日報社説】全国民に10兆ウォンばらまき、雇用維持にはたった5000億ウォン

【朝鮮日報社説】全国民に10兆ウォンばらまき、雇用維持にはたった5000億ウォン

 文在寅(ムン・ジェイン)大統領は現在の経済状況を「通貨危機以降最悪の危機」と述べた。「労使合意を通じ、雇用を維持する企業を優先的に支援する」とも語った。当然大量失業の防止をコロナ対策の最優先とすべきだ。コロナショックで経済活動がほぼストップした。内需業種だけでなく、輸出も2桁台の減少となっている。予期できなかったコロナ不況で健全だった企業や零細事業者の売り上げが激減し、黒字倒産、大量失業の恐怖が高まっている。

 雇用関連指標を見ると、深刻な失業が現実となりつつある。3月の失業給付受給者は前年同月を20%上回る60万8000人、失業給付の給付額は40%増の8982億ウォン(約794億円)に達した。雇用保険制度の導入以降で、失業給付の支給額と受給者数は過去最高だ。先月の60歳以下の就業者は53万人減で、一時休職者は統計作成開始以降で最多の161万人に達した。企業や零細事業者は売り上げが激減してもすぐには従業員を解雇せず、雇用維持支援金で人件費の補填を受け、一時休業や休職で持ちこたえている。雇用維持支援金を申請した事業所は5万カ所を超え、昨年1年間の申請件数(1514件)の33倍となった。コロナ不況が続けば、うち相当数が雇用を失う見通しだ。

 国際労働機関(ILO)は、コロナ事態で第2次世界大戦以降最悪の失業が生じると予想した。各国政府は雇用保護、失業者保護に総力を挙げている。米政府は失業手当を週最高450ドル(約4万8500円)から1050ドルに増やし、2500億ドルの予算を配分した。人口が韓国の半分のオーストラリアが100兆ウォン規模の雇用維持支援金政策を発表した。ドイツは雇用を維持しながら、勤務時間を短縮する企業に賃金の3分の2を支援し、社会保険料も免除した。フランスは雇用を維持する企業に3カ月間、賃金の84%を支援。英国、イタリアも賃金の80%を支援している。

 韓国政府の失業対策は消極的で手ぬるい。1000億ウォン規模だった雇用維持支援金を5000億ウォン規模に拡充したのがせいぜいだ。雇用維持支援金の申請が急増し、この規模では到底足りない。休業手当の75%を支給してきた雇用維持支援金を同90%まで引き上げたが、大企業への支援は同67%だけだ。

 政府・与党は19日、緊急災難支援金を所得下位70%の世帯に支給するのか、全世帯に支給するのかを巡って綱引きを展開した。与党の主張通りに全世帯を対象にすれば、緊急支援でも災難支援でもなく、無差別の現金ばらまきが9兆7000億ウォンから13兆ウォンに膨らむ。既に底を突き始めた国家財政でそんなばらまきを行えば、後から襲ってくる大量失業にどうやって対処するというのか。

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