儒教社会・韓国に広まる「嫌老」現象、背景に雇用・福祉問題

儒教社会・韓国に広まる「嫌老」現象、背景に雇用・福祉問題

 韓国社会において高齢者に対する認識が急速に悪化していることが分かった。政治、経済、社会などさまざまな分野で世代間における利害関係の対立が徐々に拡大しているのがその原因だ。影響でネットなどでは高齢者を嫌悪する書き込みなども相次ぎ、その結果、今や「敬老」は古くさい言葉とされ「嫌老」という新語まで登場するようになった。このような現状を懸念するのは高齢者たちだけではない。20代や30代の若い世代もいつかは自分たちが高齢者になることから、彼らの間からも韓国社会に広まる「嫌老現象」を懸念する声が出始めている。

 国家人権委員会は高齢者に対する人権侵害やこの問題に対する国民の認識を幅広い観点から調べるため、全国の高齢者(65歳以上)1000人とそれ以外の若い世代(19-64歳)500人を対象にアンケート調査を行い、その結果を「老人の人権に関する総合報告書」として取りまとめた。本紙がこの報告書を入手しその内容を調べたところ、高齢者が置かれた立場については当事者である高齢者よりも若い世代の方がむしろ悲観的に考えていることが分かった。とりわけ19-39歳の「青年」では80.9%が「韓国社会には高齢者に対する否定的な偏見があり、これが原因で高齢者の人権が侵害されている」と回答していた。高齢者でこのように回答したのは35.1%だった。

 高齢者に対する若い世代の否定的な見方は、雇用対策や福祉など費用面の問題が大きく影響しているようだ。報告書では若い世代の56.6%が「高齢者の雇用が増え若者の雇用が減ることを懸念している」と回答し、また「高齢者福祉の拡大により若い世代の負担が増えることを懸念している」との回答は77.1%に達した。高齢社会となって若い世代の負担が増えることが、高齢に対する恐れを生み出しているようだ。「国民年金など公的年金は老後の生活に必要なだけ受け取れないのでは」との見方には若い世代の80%が同意していた。「世代間の葛藤」についても若い世代の方が高齢者よりもはるかに深刻に受け止めていた。「高齢者と若者の葛藤は深刻か」との問いに「そう思う」と回答したのは20-30代では81.9%だったが、高齢者は44.3%にとどまり、ほぼ2倍の格差があることが分かった。

 調査を行った韓国聖書大学社会福祉学科のウォン・ヨンヒ教授は「若い世代が高齢者となった時に直面する状況について、当人たちは今の高齢者以上に心配していることが分かる」とした上で「この現状を放置すれば、高齢になることへの恐怖心が社会の不安要因になる恐れがある」との見方を示した。「高齢者は虐待を受け放任されているか」との問いに「そう思う」と回答したのは高齢者では10%にとどまったが、若い世代では85.2%に達した。また「自分が孤独死する可能性」や「年齢による職場での差別」などを心配する声も、当事者であるはずの高齢者よりも若い世代の方が2倍も多かった。

 「嫌老現象」は韓国だけの問題ではない。韓国よりも先に「超高齢社会(全人口のうち65歳以上が占める割合が20%以上)」となった日本でも、3-4年前から「嫌老」という言葉が使われ始めた。高齢者世代を養うために巨額の負担を強いられる日本の若者たちは、今や高齢者に対して否定的というよりも、高齢者になること自体に拒否感を持っているようだ。

 韓国は日本以上に早いペースで高齢化が進んでいるため、高齢者に対する嫌悪感もそれだけ急速に高まると専門家は分析している。韓国も昨年8月から高齢社会(全人口のうち65歳以上が占める割合が14%以上)に突入した。成均館大学のク・ジョンウ教授は「国民年金の分配問題や扶養義務など、世代間の経済的利害関係が表面化してきた影響で、若い世代では高齢者に対する嫌悪が今後当然広がっていくだろう」とした上で「高齢者に対する反感が差別を生み、その結果として高齢者の人権問題も深刻化し、これが高齢者嫌悪へとつながっていくのではないか」と分析した。

 高齢者に対する嫌悪は今や現実の社会問題となりつつある。最近になって20-30代の間で高齢者を侮辱する言葉が流行しているのもその表れだ。例えば入れ歯からカチカチと音がする高齢者を「トゥルタク(入れ歯カチカチ)」などと呼ぶのはその典型だ。また昨年のいわゆる「太極旗集会」には主に高齢者が、また「キャンドル集会」には若い世代が中心だったことも、世代間の葛藤を高める原因になったようだ。

アン・サンヒョン記者 , キム・ウンギョン記者 , アン・ヨン記者
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