とはいえ、会社の権力が李副会長個人に集中している印象を与えてはならない。李副会長は最近、テレビカメラの前で国民に謝罪した。李副会長が検察の捜査を受けている間には、サムスンがソウル・江南駅の通信塔でデモを行っていた被解雇者と急きょ合意に至ったとするニュースが流れた。サムスンは一時、「オーナーであっても個人のこととは徹底的に分離する」という原則を貫徹していたが、そうした原則がなくなったのではないかという指摘も聞かれる。
李副会長は経営権継承の違法性を巡る捜査では逮捕を回避した。これからは事件に関連する捜査審議委員会と国政介入事件での裁判が残されているが、ひとまず一息つく時間はできたとみられる。これからサムスンは本業にもっと力を入れなければならない。現在韓国を含む全世界の経済状況は混沌そのものだ。経済協力開発機構(OECD)は新型コロナウイルスがさらに拡散した場合、今年の世界の経済成長率がマイナス7.6%、韓国の成長率がマイナス2.5%まで低下しかねないと予想している。
多くの国民が韓国ナンバーワンの企業の戦略を聞きたがっている。サムスンがどんなビジョンでコロナ後に対処していくのか、米中貿易紛争を打破していくのか気になる。
サムスン物産の前身、三星商会が設立されたのは1938年、サムスングループを設立したのは1969年、サムスン電子がメモリー半導体でトップに立ったのが1993年だ。50年にわたる投資で、韓国に貢献する世界的企業をつくり上げたサムスン創業者一族を無視する人はいない。企業の信頼から勝ち取れば、個人の問題も自然に解決することだろう。
チョン・ソンジン産業2部長